『ラブライブ!』感想・レビュー|「スクールアイドル」という独特の存在をフルに生かした作品

今回取り上げるのは、『ラブライブ!』(2013年 サンライズ)です。

この作品は、アニメファン以外の知名度も比較的高い作品なんじゃないかと思ってます。

著名人の中にも「ラブライバー」であることを公言している人がいますし、2015年の年末には作品に登場するアイドルグループと同名の声優ユニット「μ’s」(ミューズ)がNHK紅白歌合戦にも出場していますからね。

アイドルコンテンツには、この『ラブライブ!』シリーズと双璧をなす存在として『アイドルマスター』シリーズがありますが、登場は『アイドルマスター』の方が早いです。

  • アイドルマスター』:2005年~
  • ラブライブ!』   :2010年~

ただ、一般的には『ラブライブ!』の方が知られている気がします。

これについては、既に書いたような理由もあるでしょうし、

  • アイドルマスター』:ゲーム
  • ラブライブ!』    :アニメ

という、メインコンテンツの違いも関係しているようにも思います。

アイドルマスター』シリーズにもアニメはありますし、アニメ化第2作『THE IDOLM@STER』(2011年 A-1Pictures)なんかはなかなか良かったと思うんですけどね。

これについては設定の違いで、プロのアイドルを扱っている『アイドルマスター』より、アマチュア(学生)のアイドルである『ラブライブ!』の方がより身近に感じやすかったということなのかもしれません。

実際のところ、キャラクターが個性的で生き生きとしている魅力的な作品でした。

『ラブライブ!』概要

ラブライブ!

放送・公開第1期:2013年
第2期:2014年
劇場版:2015年
話数第1期:全13話
第2期:全13話
劇場版:1作
制作サンライズ
原作矢立肇
公野櫻子
監督京極尚彦
脚本花田十輝
キャスト新田恵海
南條愛乃
内田彩
三森すずこ

ラブライブ!』には、複数のシリーズ作品が存在しています。

「ラブライブ!」シリーズ
  • ラブライブ!
  • ラブライブ!サンシャイン‼
  • ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会
  • ラブライブ!スーパースター‼

今回取り上げる『ラブライブ!』は、栄えあるアニメ第1作に当たります。

学校を救うために「スクールアイドル」を始める

本作の主人公高坂穂乃果は、東京都千代田区にある架空の女子校「国立音ノ木坂学院」に通うごく普通の高校2年生です。

「音ノ木坂」は、穂乃果の祖母も母も通った伝統校。そんな「音ノ木坂」にひとかたならぬ愛着を抱いている穂乃果ですが、実はその「音ノ木坂」、入学希望者減少のため廃校の危機に瀕しているのですね。

愛する学校を、救いたい。

そんな思いから、穂乃果は同じ学校に通う幼馴染の南ことり園田海未を誘って、スクールアイドル活動を始めることになります。

『ラブライブ!』レビュー

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アニメで初めて『ラブライブ!』に触れる人からすると、

「そもそもスクールアイドルって何?」

という話なんじゃないかと思います。

ラブライブ!』以前に聞いたことがない単語ですし、『ラブライブ!』関係以外で耳にすることもないですからね。

スクールアイドルはざっくり言うと、

部活でアイドル活動をしている女子高校生

のことです。

一部、部活に所属せずに活動しているスクールアイドルもいるので厳密とは言えないのですが、おおよそのところはこの理解で問題ありません。

「部活でアイドル」というのは、なかなか斬新だと思います。「アイドルを追いかける部活やサークル」はあっても、「自分たちがアイドルをやる部活」というのはあまり聞いたことがないですからね。

一歩間違えると、「自称アイドル」になってしまう危険性があります。そう考えると、スクールアイドルを現実でやろうとするのはかなり勇気のいる行為ということになりそうではありますが。

まあ、そのあたりのリアリティは、初めから求められていない作品と言っていいでしょう。

ただ、そういった斬新さや(良い意味での)現実感のなさは、それほど気にするところではないとも思っています。

というのも、スクールアイドルで重要なのは、

「スクール」と「アイドル」の掛け合わせ

というところにあるからです。

「スクール」要素のフル活用

アニメ『ラブライブ!』を物語の側面から見ると、より前面に出ているのは「スクール」の部分です。

もはやそのものと言ってしまってもいいんじゃないかと思えるくらいに、「部活もの」あるいは「学園もの」の色が濃い作品でした。

すぐに思いつくだけでも、これだけの「部活もの」や「学園もの」でおなじみのエピソードが盛り込まれています。

  • 部員(メンバー)集め
  • 生徒会との対立
  • ミーティングは部室
  • 赤点回避が大会(イベント)出場の条件
  • 練習場所は校内
  • 目標は全国大会優勝
  • 他校のライバルの存在
  • 海と山での合宿
  • ライブ会場は講堂
  • 文化祭でのライブ

この「部活もの」「学園もの」の定型をフルに活用できるのは、「スクールアイドル」の大きな利点です。ただの女子高生アイドル」だと、アイドル活動を学校生活にここまで溶け込ませることは難しいでしょう。

「アイドル」に「スクール」を掛け合わせたことで、それが可能になっているわけですね。

そしてこの「学園もの」「部活もの」の路線を採用しているというのが『ラブライブ!』において結構大事で、これによって主役アイドルグループ「μ’s」のメンバーや、μ’sというグループそのものの成長がわかりやすく描かれています。

ラブライブ!』のキャッチフレーズは、「みんなで叶える物語」。

物語を叶えるには成長が必要ですから、「学園もの」や「部活もの」といった「スクール」要素はキャッチフレーズの体現に大きな役割を果たしていると言えそうです。

メンバーをそろえるのに、たっぷりと時間をかけている

これもまた、「成長」に関係していると思います。

ラブライブ!』の主役アイドルグループ「μ’s」には、全部で9人のメンバーがいます。

これについてはOPで盛大にネタバレしていますので、アニメで初めて『ラブライブ!』に触れた人も最初からわかります。

にもかかわらず、本作ではμ’sが9人揃うまでに第1期の半分以上の話数を費やしているのですね。

つまり第1期に限定すると、μ’sが完全体である時間よりそうでない時間の方が長いのです。

さすがに時間を掛けすぎているのでは、と初めは思いました。「スクール」要素が強いとは書いたものの、本作が「μ’sの物語」であることは間違いないですからね。

ただ、メンバーをそろえるのに時間がかかるということは、

一人ひとりのバックボーンをしっかり描くことができる

ということでもあるんですよね。

動機や背景をはっきりさせられる、と言ってもいいかもしれません。それによってそれぞれの個性を、より際立たせることができます。

そしてまた、ここが「成長」と言えるところだと思うのですが、メンバーは、μ’s加入を決断するときに迷いや葛藤を乗り越えています。

すなわち、μ’sに加入することが既に一つの成長になっているわけです。

グループの「成長」も感じられる

これについては、最初から9人グループであると見せていることも大きいと思います。

μ’sのメンバーが9人であることは、既に書いた通り見ている我々は初めから知っています。

知っているので、9人未満で活動している期間のμ’sが、どうしても未完成な状態に見えてしまいます。

そこから少しずつメンバーが加わって、9人へと近づいていく。

厳密には、これは成長とは言えないのかも知れません。起こっているのは、ただグループのメンバーが増えている、というだけのことですからね。

しかし、先にゴールを見せることで、この事実の持つ印象が、

「ただグループのメンバーが増えている」

という意味の乏しいものから、

「完成した姿に近づいている」

という、前進を感じさせるものに変わります。

つまりは、μ’sが9人グループであることを最初からオープンにし、かつメンバーがそろうのに時間をかけることで、

μ’sというグループそのものの成長を感じさせることができる

のです。

一般的な「学園もの」「部活もの」との違い

まずは、ライブパートですね。

「アイドル」要素の最も強く出る部分で、どれも力が入っており、『ラブライブ!』という作品の大きな魅力となっています。

また、アニメ『ラブライブ!』では「3年生の卒業」が物語に大きくかかわってくるのですが、これについても他の「部活もの」とは違いがありました。

「卒業」が持つ意味の違い

μ’sは1年生、2年生、3年生が3人ずつ参加しているグループであり、主人公高坂穂乃果は2年生です。そのため、「3年生の卒業」では上級生を送る立場になるのですが、ただ送るだけでは済まないのですね。

普通の「部活もの」でも、「3年生の卒業」は描かれます。

その場合、前面に出てくるのは「同じ時間を共に過ごしてきた仲間が去っていく寂しさ」で、この点は『ラブライブ!』も変わりがありません。

違うのはそこから先で、例えばチームスポーツ系の「部活もの」であれば、3年生が卒業した後でもメンバーが入れ替わるだけで当たり前のようにチームは続いていきます。

残される2年生以下の部員に必要なのは、その事実をただ受け入れるということだけです。

しかし、『ラブライブ!』では違います。

μ’sはスクールアイドルのグループなので、3年生の卒業によって、

μ’sのこれからについての決断を迫られる

からです。

「スクールアイドル」独特の制約

穂乃果たちは、3年生の卒業を前に次のどれかを選ばなければならなくなります。

  • メンバーを変更してμ’sを継続する
  • 「スクール」ではないアイドルとしてμ’sを継続する
  • μ’sを終わりにする

「この9人で」という思いがとても強く、また「スクールアイドル」という立場にもこだわりたい彼女たちからすると、どれを選んでもつらい決断となるんですよね。

この制約は、「スクール」と「アイドル」の掛け合わせであるスクールアイドルならではのものです。

普通の「部活もの」であれば、既に書いた通りこのような決断は必要ありませんし、普通の「アイドルもの」でも、上級生の卒業といった時間的制約はないですからね。

物語後半ではこの独自の要素を大きく取り上げることで、「部活もの」とも「アイドルもの」とも違う結末を見せてくれていました。

『ラブライブ!』まとめ

ラブライブ!』が独特なのは、「スクールアイドル」という存在を作り出したことだと思います。

「部活でアイドル活動を行う女子高校生」は、高校生としても描けますし、アイドルとして描くこともできますからね。

ただ、「アイドル」に求められる商業的な側面は、少なくとも本作に登場するスクールアイドルからは見られませんでした。

グッズが販売されている場面はありましたが、彼女たち自身が商業活動をしていた場面はなかったと思います。

部活なので当たり前といえば当たり前なのですが、これだとアイドルの一側面を切り出しただけ、という見方もできてしまいます。極端なことを言えば、アイドルではなく「ダンスボーカルユニット」でも良くなってしまうんですよね。

活動自体は「ダンスボーカルユニット部」なのに、「スクールアイドル」という新しい言葉で飾ることで、独自の存在を作り出している。

そこが『ラブライブ!』という作品の、面白いところなのかもしれません。

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本記事の情報は、2022年6月30日時点のものです。最新の情報は公式サイトをご確認ください。

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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。