『OVERMANキングゲイナー』感想・レビュー|楽しいOPが癖になる?娯楽性の高い「白富野」作品

OVERMANキングゲイナー
サンライズ 2002
総監督:富野由悠季
原作:富野由悠季
シリーズ構成:大河内一楼
キャラクターデザイン:中村嘉宏、西村キヌ、吉田健一
メカニカルデザイン:安田朗、山根公利、吉田健一
音楽:田中公平
キャスト:野島裕史・かわのをとや・小林愛・林真里花・子安武人

OVERMANキングゲイナー』は2002年9月から2003年3月にかけて、WOWOWで放送されたサンライズ制作のロボットアニメです。

富野由悠季総監督が手掛けたテレビシリーズとしては『∀ガンダム』(1999)以来2年半ぶりの作品で、いわゆる白富野作品の一つです。

そのため、戦いはあっても人が死ぬ描写はほとんど出てきません。

白富野作品と言えば『∀ガンダム』の他に『ガンダム Gのレコンギスタ』(2015)もありますが、これらの作品に共通するのが、オープニングテーマやエンディングテーマの歌詞に主要ロボットや作品タイトルが含まれていることでした。

1970~80年代のロボットアニメをほうふつとさせるこの要素は本作も共通で、オープニングテーマ「キングゲイナー・オーバー!」では、

キング キング キングゲイナー

と連呼されます。

さらに本作は映像面でもエンターテインメント性が高く、オーバーマンや主要登場人物が踊るモンキーダンスが楽しいものとなっていました。

この「エンターテインメント性」は、本編にも共通しています。

』や『Gのレコンギスタ』が好きな人なら、満足できる作品なんじゃないかと思います。

『OVERMANキングゲイナー』概要

OVERMANキングゲイナー』は、未来の地球を舞台にした物語です。

この時代の人類は文明の発展によって傷ついた自然を回復させるため、極寒地などの過酷な環境に「ドームポリス」という巨大都市国家を建設し、そこで生活しています。

ただ、長くそうした生活を続けているうちに、ドームポリスからの脱出を図る「エクソダス」という運動が起こってくるのですね。

本作の主人公ゲイナー・サンガも、「エクソダス」に参加する一人です。ただ、彼の場合積極的に賛同したというより、巻き込まれた、といった方が正しいかもしれません。

ゲイナーは、シベリアのドームポリス・ウルグスクに住む高校生で、「オーバーマンゲーム」というテレビゲームのチャンプでもあります。

あるきっかけで、エクソダス請負人ゲイン・ビジョウと知り合いになったゲイナーは、ゲインと行動を共にする中でオーバーマン「キングゲイナー」に乗り込むことになるのですね。

オーバーマンゲームのチャンプということもあって、ゲイナーはキングゲイナーを巧みに操ることができます。

キングゲイナーに乗り込んだのはたまたまでしたが、以降キングゲイナーのパイロットとなり、ゲインが請け負うヤーパンへのエクソダスを手伝って、それを阻止しようとするシベリア鉄道セント・レーガンといった組織と戦うことになります。

『OVERMANキングゲイナー』の魅力1:ロボットアニメだが、殺伐としていない

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OVERMANキングゲイナー』のおもしろいところは、

ロボットバトルが見どころの作品であるのに、決して殺伐とはしていない

という点です。

死を感じさせない」というのは、その理由の一つと言えるでしょう。冒頭でも紹介しましたが、本作では人が死ぬ描写はほとんど登場しません。

また、どこか憎めない登場人物ばかりというところも、理由として挙げられるように思います。

シベリア鉄道のキッズ・ムントカシマル・バーレ、セント・レーガンのアスハム・ブーンといった敵側のキャラクターにもコミカルなところがあり、冷徹で残酷な悪人としては描かれていないのですね。

特に印象的なのがアスハムで、ゲインを追い回す執拗さもさることながら、その自己中心的な行動や、感情に振り回され、本来の目的を見失いまくっている姿には滑稽さすら感じさせるものがありました。

アスハム役の子安武人の熱演(怪演?)がそれに強烈な印象を加えており、第22話「アガトの結晶」などはアスハム大暴れの回となっています。

『∀』のギム・ギンガナムもそうでしたが、アスハムもそれに負けていないくらい印象の強いキャラクターでした。

ただ、『∀』と比較すると全体的に本作の方がコミカルな色が濃く、キャラクターもそれに合わせたものとなっていました

その分、殺伐とした印象も薄くなっています。

『OVERMANキングゲイナー』の魅力2:実はエクソダスに賛同していないゲイナー

OVERMANキングゲイナー』のもう一つのおもしろい点は、

主人公のゲイナーがエクソダスの賛同者ではない

というところです。

むしろゲイナーは、ある理由からエクソダスを毛嫌いしているのですね。

だからと言ってゲイナーが、エクソダスに非協力的というわけではありません。少なくとも、自らの思想や信条を理由に戦うことを拒絶したりはしないのですね。

キングゲイナーを最も上手に操縦できるのは、ゲイナーです。

またシベリア鉄道やセント・レーガンは、ヤーパンへのエクソダスを阻止するべく、ゲイナーたちの事情などお構いなしに襲撃してきます。

そのため、ゲイナーはキングゲイナーに乗って戦わざるを得ません。

矛盾を抱えたまま、それでも目の前の状況に対応していきます。そうするうちに、ゲイナーの方が状況に順応していくのですね。

こうした主人公の変化は、白富野に限定されない、富野作品の多くに共通した傾向でもあるように思います。

目の前の状況に必死に対応する姿は、一見するとただ流されているだけのようでありながらも、やがてその中にある自分の役割に目覚めていく。

本作の主人公であるゲイナーも、同じでした。その意味では、しっかりとした富野作品の主人公だったと思います。

ただ彼の場合、初めからエクソダスの賛同者というわけではなかったからこそ、そうした姿が描けたとも言えそうにも思いました。

『OVERMANキングゲイナー』の魅力3:オーバーマンは色々と想像を搔き立てられる存在

OVERMANキングゲイナー』には、

  • オーバーマン
  • シルエットマシン

という2種類のロボットが登場します。

より高性能な方に位置付けられるのがオーバーマンなのですが、このオーバーマン、なかなか想像を搔き立てられる存在でもあるのですね。

オーバーマンには、どこか怪人や怪獣を思わせるところがあるのです。

その要因の一つが、「オーバースキル」です。

オーバースキルとはオーバーマンが持っている特殊能力のことで、機体ごとに違っています。

実際には完全に固有というわけではなく、オーバーコートという装備を着替えることで他のオーバーマンの能力を使用することはできます。

ただ、ロボットなのに「能力」というところに違和感があるのですね。

「武器」や「武装」ならわかります。いかにも機械的な感じがしますからね。でも「能力」だと、そういう印象は受けません。怪人や怪獣の方により近いものを感じます。

オーバースキルの具体的な内容も、

  • 時間停止
  • 透明化
  • 人の恐怖を具現化させる

といったものになっていて、こちらもロボットの武器というより、怪人・怪獣の能力と呼んだ方がふさわしいものが多いのですね

この他にも、

  • 丸みを感じさせるデザインは、機械というより生体を感じさせる
  • 動力であるマッスルエンジンは、その名前が示す通り筋繊維のような外観をしている

などに、オーバーマンの「ロボットらしくなさ」があります。

オーバーマンはロボットではない?

では、オーバーマンがロボットでないのかというと、そういうわけでもないのですね。

オーバーマンには整備できるメカニックがいますし、新しいオーバーマンを開発することもできるからです。

人の手で作り出すことができ、メンテナンスができるというのは、よりロボット的な特徴でしょう。

それでもなお、オーバーマンをロボットと言い切れない理由が、アーリー・オーバーマンの存在です。

アーリー・オーバーマン

アーリー・オーバーマンとは、その名の通り初期のオーバーマンのことです。

初期というからには、古いオーバーマンであることは間違いないのですが、アーリー・オーバーマンの方が現代のオーバーマンより高性能なのですね。

加えて、アーリー・オーバーマンにはよくわからないところもある。何しろ、パイロットが登場していないのに動き回っているアーリー・オーバーマンなども登場するのです。

人が作ったものであれば、人がその原理や構造を理解できているはずです。

ところが、アーリー・オーバーマンはそうではない。

そしてまた、初期のオーバーマンがそうであるということは、オーバーマンには普通のロボットとは違う、特殊な機構が組み込まれているのではないか、とも思えてくるのですね。

このオーバーマンの多くは語られない謎めいた部分に、想像な想像を掻き立てられます。

そしてこれが、本作の一つの魅力にもなっています。

『OVERMANキングゲイナー』の魅力4:個性豊かな女性キャラクター

富野監督作品は個性的な女性キャラクターが多い印象がありますが、本作もそれは同じです。

  • ゲイナーの同級生でヒロイン的な存在、ハスキーな声が印象的なサラ・コダマ
  • 貴族の娘であり、8歳と年少ながらその言動から聡明さがうかがえる、作品のマスコット的存在アナ・メダイユ
  • そのポンコツぶりが『∀ガンダム』のポゥ・エイジを思い出させるジャボリ・マリエーラ
  • 本人の登場は後半ながら、終盤の展開に大きく関係してくるシンシア・レーン

など、枚挙に暇がないくらいですが、中でも特に目を引くのがアデット・キスラーですね。

個人的には、一番良かったと思います。

抜群のスタイルを持っていながら性格は荒っぽく行動は強引、ゲイナーやゲイン、サラが振り回されることもしばしばです。

一方で、姉御肌で面倒見は良いため彼女を慕う人も多く、本作では非常に魅力的な存在となっていました。

第8話「地獄のエキデン」でのサラとの対決などは、楽しいエピソードでした。

『OVERMANキングゲイナー』まとめ

OVERMANキングゲイナー』は、『∀ガンダム』や『Gのレコンギスタ』の系譜にある白富野の作品です。

殺伐としたところはなく、前作の『∀ガンダム』よりもエンターテインテインメント性が高い作品となっていました。

富野総監督作品におなじみの「富野節」も健在ですので、好きな人には満足できる内容なのではないかと思います。

dアニメストア等のお試し期間を利用すれば、無料で全話見ることもできると思います。気になった方はぜひチェックしてみてください。

タイトル『OVERMANキングゲイナー』
放送2002年9月7日 -2003年3月22日
放送局WOWOW
話数全26話
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。