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放送 | 第1期、第2期:2016年 第3期:2019年 |
話数 | 第1期:全12話 第2期:全12話+OVA1話 第3期:全12話 |
制作 | ボンズ |
原作 | 朝霧カフカ・春画35(ヤングエース) |
監督 | 五十嵐卓哉 |
シリーズ構成 | 榎戸洋司 |
脚本 | 榎戸洋司 |
キャスト | 上村祐翔、宮野真守、細谷佳正、神谷浩史 |
原作は未読だったのですが、五十嵐卓哉監督、榎戸洋司脚本、ボンズ制作だったので、興味をひかれました。
五十嵐監督・榎戸脚本と言えば、
- 『桜蘭高校ホスト部』
- 『STAR DRIVER 輝きのタクト』
などがありますが、どちらも独特の作風を備えた作品だったと思います。
『文豪ストレイドッグス』にも似たところを期待していたのですが、裏切られた感じはしなかったですね。
特に、コミカルなシーンの演出は両作とも似たところがあったと思います。
(どちらかというと、『桜蘭高校ホスト部』の方に近かったかもしれません)
両作との違いは、続編が制作されていることですね。
『ホスト部』『スタドラ』は1期2クールのみでしたが、『文豪ストレイドッグス』はすべて1クールずつとはいえ、第3期まで制作されています。
第1期と第2期を分割2クールと捕えても、第3期があることは大きな違いでしょう。
さらに新シリーズの制作も、2021年11月に発表されているようですしね。
原作の方も『ヤングエース』の看板作品になっているようですし、押しも押されもせぬ人気作品です。
なお、上の表では第1期~第3期とまとめて記載していますが、以下のように細かく分けるのが正しいようです(公式サイト)。
1st SEASON | 第1話~第12話 |
黒の時代 | 第13話~第16話 |
2nd SEASON | 第17話~第25話 |
十五歳 | 第26話~第28話 |
3rd SEASON | 第29話~第37話 |
というわけで今回は、『文豪ストレイドッグス』の感想を綴っていきます。
本記事の情報は、2022年3月27日時点のものです。最新の情報は公式サイトをご確認ください。
『文豪ストレイドッグス』感想1:「文豪」の物語ではない
「文豪」本人でない
『文豪ストレイドッグス』を見始める前、予備知識のほとんどなかった私は、どういうわけか本作を実在の文豪たちの物語だと思い込んでいました。
キービジュアルなんかを見て、美男美女がもりもり登場する作品だということは想像できていたのですが、それもアニメ用にアレンジされた文豪たちなんだろうと思っていたのですね。
でもふたを開けてみたら、全然違いました。
確かに「中島敦」や「太宰治」、「国木田独歩」や「芥川龍之介」は登場します。
ですが、彼らは実在の「文豪」ではないのですね。
同姓同名というだけの別人であり、文豪はおろか作家ですらありません。
泉鏡花や尾崎紅葉などは、性別すら違っていますからね。
では彼らが何者なのかというと、その大半は「異能力」と呼ばれる特殊能力を備えた超能力者であり、一番の見どころも、
異能力を駆使した戦い(異能力バトル)
にあるという作品でした。
「同姓同名」の違和感
勝手な思い込みを持って見始めたため、第1話で「あれ?」とは思いました。
ですが、当たり前のことながら作品に罪はありません。
私が勝手に勘違いしていただけですからね。
ただ、実在の「文豪」の物語ではないことがわかると、今度は違うところが引っかかるようになってきました。
どうして「文豪」と同姓同名にしなければならなかったのか
という点です。
「文豪」本人でないのだから名前を変えてもよかったはずですし、違う名前でも、物語として十分成立するように見えたんですよね。
「架空のキャラクターに、実在の人間の名前」ということ自体が違和感につながっているのかとも思いましたが、どうもそうではなさそうでした。
「同姓同名」のキャラクターが登場する別の作品では、そんな風に感じたことはなかったからです。
「人間的背景」の不足
あれこれ考えながらたどり着いた違和感の正体は、
利用しているのは名前だけで、「背景」などがセットになっていない
というものでした。
実在の人物の名前をそのまま架空のキャラクターに付けるということは、その人物の性格や趣向、能力だけでなく、その「人間的背景」もキャラクターに背負わせることになります。
背負わせる、というと少々ネガティブに聞こえるかもしれませんが、実はこれこそが、実在の人物の名前をそのまま架空のキャラクターに付けることの一番の動機、だと思うんですよね。
「実在の人物をモチーフにしているものの、名前は違うキャラクター」にすることだってできるわけですからね。
しかし『文豪ストレイドッグス』に登場する同姓同名のキャラクターたちからは、
元となった「文豪」たちに対する深い洞察と、それを基礎とした人間的背景
みたいなものが残念ながらほとんど感じられませんでした。
名前以外で元となった「文豪」を思わせる要素は
- 「異能力」の名称
- 一部の登場人物の趣味・嗜好
くらいで、登場人物を実在の「文豪」と同姓同名にする理由としてはあまりに弱かったです。
厳しい言葉を使うと、「表面的」にしか見えませんでした。
「文豪」本人は登場しないにせよ、タイトルに「文豪」を掲げてキャラクターも同姓同名にしているのであれば、もう少し元となった実在の「文豪」を感じさせる部分があってもよかったと思います。
「後半にそれを感じさせるエピソードが用意されているのでは」という密かな期待もあったのですが、それもありませんでしたね。
「わざわざ同姓同名にしなくてもよかったんじゃないかな」という疑問は、結局最後まで付きまとうことになりました。
『文豪ストレイドッグス』感想2:顔をのぞかせるレトロ要素
基本は現代、でも少し違う
登場人物が実在の「文豪」と同姓同名であることに必然性を感じられなかった『文豪ストレイドッグス』ですが、それによってもたらされたおもしろさもありました。
その1つが、ところどころに顔をのぞかせるレトロ要素です。
『文豪ストレイドッグス』の時代設定は、基本的には現代です。
携帯電話やパソコン、インターネットといった、現代を象徴する情報通信機器が当たり前のように登場していることからもそれはわかります。
しかし、では我々が実際に生きている現代社会とまったく同じかというと、そういうわけでもなさそうなのですね。
次の2つが存在していることからも、それはわかると思います。
- 昭和22年(1947年)に廃止された「内務省」
- 旧軍の憲兵を思わせる「軍警察」
ただこの2つの組織、作品の都合上どうしても登場させなければならなかったか、というと、そんなこともないように思うんですよね。
どちらも、現実に存在する別の組織で代替できそうに思えました。
「レトロ」の理由
ではなぜ、現代の日本には存在しないこの2つの組織を『文豪ストレイドッグス』の世界に登場させたのか。
おそらくは、
同姓同名の「文豪」たちが、実際に生きた時代の空気を持ってきたかったから
なんじゃないかと思います。
雰囲気づくり、と言ってもいいかもしれません。
モチーフになった同姓同名の「文豪」たちは、明治~昭和前期を活動時期にしていた人が多いです。
内務省や軍警察(憲兵)といった「古い組織」が存在していた時代でもあるので、それらを登場させることで時代の空気を感じさせることはできるでしょう。
- 和綴じの手帳
- 蒸気機関車
- 黒電話
といった、現代の日本では一般的とは言えない古い事物を登場させているのも理由は同じだと思います。
インターネットが存在している時代に黒電話というのもおかしな話なのですが、そこはあえてそうしているのでしょう。
「過去に戻る」感覚
もっとも、意地の悪い見方をすると、これも「表面的」と言えてしまいます。
何しろ、「同姓同名」である必然性の弱さを、「文豪」が生きた時代の空気を持ち込むことで誤魔化そうとしている、と取ることもできてしまいますからね。
ですが、個人的にはこれはそれほど悪いとは思いませんでした。
むしろ、おもしろいと思いましたね。
古い事物が登場した途端、時代が一気に過去に戻る
という感じがしたからです。
『文豪ストレイドッグス』の時代設定は現代なのですが、古い事物が登場することで、それに引っ張られて物語全体がそれらが一般的だった時代にタイムスリップしたような気分にさせられるのですね。
もちろん、実際に過去に戻るわけではなく、あくまでそういう気分にさせられる、というだけの話なのですが、そこだけ時間が止まったような古い事物が、現代にぽっかりと開いた過去への通路のようにも思えました。
『文豪ストレイドッグス』感想:まとめ
登場人物が実在の「文豪」と同姓同名というところがどうしても気になって仕方がなかった『文豪ストレイドッグス』ですが、この作品の一番の見どころは、
異能者同士のバトル(異能バトル)の作画
でしょう。
全体的に作画の美しい作品なのですが、特に異能バトルは見ごたえがあります。
ですので、原作を読んでストーリーを知っている人でも、十分楽しめるのではないかと思います。
(アニメを見始めてから原作を3巻まで読んでみたのですが、序盤のストーリーは原作通りでした)
また、原稿用紙風にアレンジされたテロップの多用などは、五十嵐卓哉監督・榎戸洋司脚本作品の特徴に『文豪ストレイドッグス』要素を加味したものになっていました。
こちらも「文豪」の雰囲気づくりに、ひと役買っていたと思います。
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今回は、以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。