『ダーリン・イン・ザ・フランキス』感想・レビュー|未来の世界はとてつもなく歪んでいる

ダーリン・イン・ザ・フランキス
TRIGGER・A-1Pictures 2018
監督:錦織敦史
原作:Code:000
シリーズ構成:錦織敦史・林直孝
キャラクターデザイン:田中将賀
メカニックデザイン:コヤマシゲト
音楽:橘麻美
キャスト:上村祐翔・戸松遥・市ノ瀬加那・市川蒼・早見沙織

ダーリン・イン・ザ・フランキス』は、2018年1月から7月にかけてTOKYO MXほかで放送された、TRIGGER・A-1Pictures共同制作のテレビアニメです。

A-1Picturesは高円寺スタジオが制作を担当していたのですが、本作の放送された2018年に分社化されました。

現在のCloverWorksですね。

最新の状態を反映するなら、表記はTRIGGER・CloverWorks共同制作になるのかもしれません。本作でも、16話からクレジットがCloverWorksに変更されていました。

本作は、冒頭部分だけ見ると『新世紀エヴァンゲリオン』に似た印象を受けるかもしれません。ロボットの起動にパイロットの同調が必要だったり、傷だらけで戦う謎めいた少女が出てきたりするからです。

ただ、個人的には『エヴァ』とは違うように思いました。近いのはむしろ『天元突破グレンラガン』や『トップをねらえ2!』といった作品で、中でも後者の方により親和性を感じました。

ですので、『トップをねらえ2!』が好きな方は、気に入るんじゃないかと思いますし、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』を先に見て気に入った方は、『トップをねらえ2!』もぜひ見ていただければ、と思います。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』概要

ダーリン・イン・ザ・フランキス』は、遠い未来の地球を舞台とした物語です。

この時代の地球は大地が荒れ果ててしまっており、人類は「プランテーション」と呼ばれる移動要塞都市を建設して、その中で生活しています。

でもプランテーションは、完全に安全な場所というわけでもないのですね。

「叫竜」と呼ばれる謎の巨大生命体が、襲ってくるからです。

人類は叫竜と戦うために、「フランクス」と呼ばれる人型ロボット兵器を開発しました。

フランクスは量産可能な兵器で、部隊を編成することができます。プランテーションもまた複数存在するのですが、各プランテーションにこのフランクス部隊を配備して叫竜に対抗しているというのが、本作が描く未来の人類の姿です。

フランクスの操縦には、男女二人のパイロットが必要です。それも、誰でもOKというわけにはいきません。搭乗にはある条件を満たしている必要があるのですが、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の世界ではこの条件を満たす大人がいないため、フランクスのパイロットはすべて子どもが担っています。

この子どもたちを、本作ではパラサイトと呼んでいます。

パラサイトに親や家族はありません。生まれたときからパラサイトとなるべく、専用の施設で育成されています。

名前も与えられておらず、全員がコードナンバーで呼ばれています。

パラサイト候補の一人である本作の主人公ヒロもそれは同じで、彼のナンバーは「コード016」。ヒロとはこのコードナンバーの読み方から取ったニックネームで、ヒロの仲間である第13都市部隊のパラサイトたちも、同じように自分のナンバーを元にしたニックネームで互いを呼び合っています。

かつてのヒロは、パラサイトとして高い適正値を示しており、候補生の中でも中心的な存在でした。

しかしあるときから適正値が下がりはじめ、作品開始当初はすっかり落ちこぼれとなってしまっています。

パラサイト認定のためのテストを受けても、あえなく失格。正式なパラサイトとして認められず、自らの存在意義を見出せずにいました。

そんなヒロの前に現れたのが、頭に赤い角の生えた少女ゼロツーでした。彼女との出会いが、ヒロの運命はを大きく動かしていくことになります。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の見どころ1:歪んだ世界と歪んだ価値観

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ダーリン・イン・ザ・フランキス』という作品が最初に突き付けてくるのは、「概要」の項目でも紹介したようなものすごく歪な価値観を持った世界です。

その最たるものが、「子どもが大人を守るために、命を懸けて戦う」というもの。普通の感覚だと、逆ですね。大人が子供を守るために、命を懸けるべきです。

でも『ダーリン・イン・ザ・フランキス』では、そうはなっていない。

その異常さに拍車をかけるのが、誰もそれをおかしいとは考えていないことです。ごくごく自然な、当たり前の事実として、それを受け容れている。

「自分たちは、フランクスに乗って叫竜と戦うために作られたのだ」

子どもたちも本気でそう信じているのですが、もちろん生まれつきそれを信念として抱えていたわけではありません。育成の過程で、そう刷り込まれてきています。

ここは、非常に邪悪さを感じるところです。子どもたちをそう洗脳したのはもちろん大人たちで、彼らが子どもを自分たちに都合のいい道具としか考えていないことがわかるからです。

子どもに名前がなく、個体の識別がコードナンバーで行われているという点にも、それは現れています。子どもは人間ではなく、家畜か何かのように扱われているのですね。

でも誰も、その異常さを訴えない。この異常さを当たり前のように受け入れているのが、本作の不気味なところです。

主人公ヒロについても、それは同じです。彼もまた、自分の存在意義はフランクスに乗って戦うことにしかないと考えている。だからこそ、パラサイトとしての適正値の低さに苦悩します。

でも見ている我々からするとこれは、歪んだ世界の歪んだ価値観に適合できない苦しみでしかないんですよね。

「元が歪んでいるんだから、それに適合できないからといって悲観する必要はないだろ!」などと思ってしまうのですが、作品の世界観にどっぷり浸かっているヒロにとってはそうはいきません。

「正式なパラサイトになってフランクスで戦えるなら、命なんていらない」というところまで、思い詰めます。

こうしたヒロの態度は、主人公でありながらちっともシンパシーを感じるものにはなりません。それどころか、おかしな教義を妄信する理解不能な宗教の信者を見ているような、異様さすら感じてしまいます。

もちろんこれは導入部の話で、ヒロがずっと狂信者のまま、というわけではないのですが、この主人公とそれを外から見ている我々との感覚のずれは、本作序盤のちょっとしたおもしろさになっています。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の見どころ2:ゼロツーの複雑さとその変化

ダーリン・イン・ザ・フランキス』に登場する人類は、現代に生きる我々とは違っています。

具体的にどこが違うのか、という点については、ネタバレになってしまうのでここでの紹介は控えます。ただ、その違いは現代人からかけ離れたものではなく、未来の人類と現代人が地続きにあることを感じさせるものとなっています。

ところが、ゼロツーは違います。

何しろ彼女の額には、二本の赤い角が生えていますからね。彼女は、現代人の進化した姿というようには見えません。

それはすなわち現代とはちょっと違う人間たちの中に、一人だけ全然違う存在がいるという状況を作り出すものにもなっています。二重に違いが生じているわけで、これがなかなか不思議な印象を与えます。

そしてこのゼロツーなんですが、内面も大分ややこしい存在です。

性格は奔放で、束縛を嫌い、行動は気まま。元々はヒロたちの所属している第13都市部隊の所属ではなかったのですが、ヒロが気に入ったから、という理由で半ば強引に部隊に加入してきます。

でも、ヒロ以外のメンバーには、大して関心がないのですね。

ヒロに対しては「ボクのダーリン」などと言ってご執心な様子なのですが(ゼロツーの一人称は「ボク」です)、では甘ったるいラブコメみたいに彼にべったりかというと、そうでもない。

表向きはヒロと密接する態度を見せていても、心ではどこか壁を作っているようにも見えるのです。

パラサイトとしての能力はピカイチで、まさにエースといった存在です。愛機ストレリチアを駆って叫竜を倒しまくり、相手が強力な叫竜の場合はその力が欠かせません。しかし周囲と馴染もうとしない彼女には当然謙虚さなども装備されておらず、そのハイスペックを鼻にかけて、他の人間を見下すような発言もしばしば見られます。

人を人とも思っていないような発言にも、ためらいがありません。

そしてまた、これが彼女をややこしく見せている点でもあるのですが、そうした排他的な態度が、ダーリンであるはずのヒロにまで向けられることがあるのですね。

結局ゼロツーは自分の目的のために、ヒロを利用しているだけなんじゃないのか。では、その目的って、一体何なのか。

そこが序盤では明らかにされていないのですね。だからこそ、彼女は何を考えているのかよくわからない、けれどもとにかく一筋縄ではいかない複雑な存在として、物語を引っ掻き回すことになります。

もちろん、ゼロツーのこの複雑さの理由は、永遠に謎のままではありません。物語が進むにつれて明らかになっていきます。

また、ヒロとの関係も変化します。特に本作は人間関係やその心理が丁寧に描かれた作品ですので、ゼロツーとヒロとの関係がどう変化していくのかは、大きな見どころとなっています。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』の見どころ3:パラサイトたちの行く末

概要でも紹介しましたが、フランクスの操縦者であるパラサイトたちは、フランクスに乗って戦うことだけを目的として育成された子どもたちです。

こう書くと、感情のない戦闘マシーンのような存在を想像するかもしれません。でも、実際にはそうではないのですね。

常識的な知識の一部に、欠落は見られます。しかしパラサイトたちの基本的なふるまいや心の動きは、見ている我々が知っているティーンエイジャーそのものです。

そしてこの、普通の少年少女たちと変わらないように見える、というのは結構重要なところです。というのも、そうであるからこそ、彼らに付きまとって離れない死の影が、より一層悲愴なものに見えてくるからです。

ここでいう死の影とは、彼らが従事している危険任務(叫竜との闘い)のためだけではありません。むしろ大きいのは、パラサイトは寿命も短いのではないか、という予感の方です。

実際のところ、その点について作品の中ではっきりと示されることはありません。

しかし、明かされないからこそ気になってしまいますし、また、

  • パラサイトは少年少女ばかり
  • よくわからない注射を打たれている
  • 原因不明の発熱がある

などの状況が、そうした推測を正しいもののように感じさせるんですよね。

パラサイトの存在意義が叫竜と戦うことにしかない、という作品世界の常識を重ね合わせると、その想像はますます間違っていないもののように思えてきます。

まったくひどい話です。子どもを、使い捨てにしているようなものですからね。

第13都市部隊のメンバーに、ゾロメというパラサイトがいます。彼は大人になることに憧れており、たびたびそのことを口にするのですが、これがまた哀しい。

パラサイトたちも、自分たちの寿命がそれほど長くはないことを、何となく気が付いている風があるんですよね。でもそれを、あえて直視しないようにしている。だから誰もゾロメの夢に疑問を呈することはしないし、否定もしません。

ゾロメ自身も、薄々そのことに気が付いているのではないかというのが、何とも言えない気持ちにさせられるところです。

彼らに幸あれ、と思わずにはいられないパラサイトたちに、どのような運命が待ち受けているのか。そして彼らがどのような未来を選び取っていくのかも、本作の見どころとなっています。

『ダーリン・イン・ザ・フランキス』まとめ

ダーリン・イン・ザ・フランキス』は、遠い未来を舞台に、人類を襲う叫竜とフランクスに乗って戦うパラサイトと呼ばれる子どもたちとの戦いを描いた作品です。

特に目を引くのが、叫竜と戦うためだけに子どもを育成するという世界の異様さ。

そんな世界で懸命に生きるパラサイトの少年ヒロと角のある少女ゼロツー、そして第13都市部隊の面々にどんな運命が待ち受けているのか、が大きな見どころです。

冒頭でも紹介しましたが、個人的には『トップをねらえ2!』に近い印象を受けました。『トップをねらえ2!』を良い作品ですので、本作が気に入ったら、ぜひそちらもチェックしてみてください。

dアニメストア等のお試し期間を利用すれば、無料で視聴することもできると思います。

タイトル『ダーリン・イン・ザ・フランキス』
放送2018年1月13日 -2018年7月7日
放送局TOKYO MXほか
話数全24話
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。