『ベルセルク』感想・レビュー|「あの部分」を大胆に省略した人気ダークファンタジーのテレビアニメ化第2弾

ベルセルク
GEMBA/ミルパンセ 2016・2017
監督:板垣伸
シリーズ構成:深見真
脚本:深見真、山下卓
キャラクターデザイン:阿部恒
音楽:鷺巣詩郎
キャスト:岩永洋昭・水原薫・日笠陽子・興津和幸・下野紘

ベルセルク』は、2016年7月から9月と、2017年4月から6月に、WOWOW、MBSほかで放送されたGEMBA/ミルパンセ制作のテレビアニメです。

分割2クールでの放送でした。

原作は、三浦建太郎による同名漫画です。1989年から30年以上連載が続いている人気作品で、2021年に作者は急逝しているんですが、構想が残されていたらしく、その後も連載が継続されています。

歴史の長い作品なので、アニメ化も本作が初めてというわけではありません。

古くは1997年にテレビシリーズが放送されました。

このときはタイトルが少し変更されていて『剣風伝奇ベルセルク』になっています。内容は、主人公ガッツの過去を描いた、原作でいうところの「黄金時代篇」をベースにしていました。

今回紹介する2016年版もそうなのですが、『ベルセルク』の場合、原作が丸ごとアニメ化されている作品というのはありません。原作の一部、というケースが多く、次のアニメ化となった2012~13年の劇場版も同様です。

このときも、映像化されたのは「黄金時代篇」でした。三部作になっています。

「黄金時代篇」劇場版三部作
  • ベルセルク 黄金時代篇 I 覇王の卵
  • ベルセルク 黄金時代篇 II ドルドレイ攻略
  • ベルセルク 黄金時代篇 III 降臨

もっとも、「一部」と言いながら「黄金時代篇」はコミックの3巻から14巻に当たる内容なので、十分すぎるほど長いんですけどね。

今回取り上げる2016年版『ベルセルク』は、「黄金時代篇」ではありません。それ以外の部分を中心に描かれており、「黄金時代篇」は大胆に省略されています。

ただ、このあたりの良し悪しは、人によって違うような気がします。そのあたりも合わせて、書いてみようと思います。

『ベルセルク』概要

ベルセルク』は中世ヨーロッパを思わせる架空の世界を舞台に、隻腕隻眼の剣士ガッツと「使徒」との戦いを描いたダークファンタジーです。

使徒って何? という点について、ここでは「人間を簡単にひねりつぶすことができる怪物」と考えておいていただければよいです。実際には、その正体にはただの怪物というだけではない事情があるのですが、それについては作品を実際に見て確かめていただくのが良いでしょう。

使徒の力は強大で、普通の人間では束になってもかないません。しかしガッツは、その使徒相手に生身に身体一つで戦いを挑みます。

そんなことが可能なのは、ガッツが人間離れした戦闘力を備えているからこそ。それでも楽勝ということはなく毎回ボロボロになりながら、やっとのことで使徒を倒します。

そうまでして使徒と戦うを理由を、使徒を皆殺しにするため、と口にするガッツ。その先にある本当の目的については、物語が進むにつれて明らかになっていきます。

『ベルセルク』のレビュー

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戦闘シーンの迫力

ベルセルク』を映像化することの意義の一つが、戦闘シーンです。これを以下に魅力的で、迫力のあるものにできるかは大事なところ。

本作でまずよかったのは、『ベルセルク』おなじみの、「ドラゴンころし」を振り回して雑魚キャラを薙ぎ払うシーンです。

「ドラゴンころし」とは、主人公ガッツの主要武器です。大層な名前が付けられていますがその正体は、

「それは剣というにはあまりに大きすぎた。大きく、ぶ厚く、重く、そして大雑把すぎた。それはまさに鉄塊だった」

と作品の中で語られている巨大な剣。

ガッツ自身がかなり体格の良い、大男と呼んでいい部類なのですが、そのガッツを上回る長さがあり、それに見合った幅を持った武器です。剣というより、鉄板と呼んだ方がいい代物ですね。

普通の人間では持ち上げることもできないこの鉄塊を、ガッツは軽々と振り回して戦います。雑魚キャラとの戦いでは、人薙ぎで何匹(何人)も敵を両断していくガッツ。

この場面、それ自体の迫力はもちろんのこと、アングルにも工夫が施されていたのがおもしろいところでした。メインに3DCGが使われているのですが、それを活かした「ならでは」のものだったと思います。

対使徒は「苦闘」

雑魚相手には「ドラゴンころし」を振り回して無双できるガッツですが、相手が使徒や、それと同等以上の力を持つ怪物だとそんなに簡単にはいきません。

文字通りの苦闘になります。

ガッツの戦闘能力は、人間離れしています。しかし、だからといって、彼自身が普通の人間にはない特殊な能力を備えているわけではありません。基本は「ドラゴンころし」をメインとした白兵戦です。それも全身を叩きつけるような、肉弾戦になります。

相手は人間を片手でひねりつぶすことができる使徒ですから、ガッツといえども苦戦します。その戦いぶりは、華麗とは程遠いものです。

地面や壁に身体を叩きつけられ、ボロボロになって血反吐を吐きながら、それでも何とか活路を見出して、やっとのことで勝ちを拾う。それが、使徒と戦うときのガッツの姿なのですね。

彼が続けているのは、いつ死んでもおかしくないような戦いです。それでもガッツは、「使徒を皆殺しにする」という目的を取り下げるようなことはしませんし、その心はまったく折れません。

使徒との戦いの最中にも見せる、この強靭な精神力はガッツの大きな魅力です。

そしてその対使徒の苦闘ぶりも、よく伝わってくる内容となっています。

謎の多いストーリー

普通の人間なら、戦うことすら考えないような強大な存在。それが使徒です。

その使徒を皆殺しにすることが目的と語るガッツ。しかしそのガッツも、使徒相手の戦いに有効な手段を持っているわけではありません。

自らの肉体と精神力を武器に立ち向かっていくしかないのですが、ではなぜガッツはそこまでして、使徒を倒したいと考えているのか。

この点が、『ベルセルク』という物語の序盤を引っ張る謎になっています。

そのヒントになりそうなのが、魔物や使徒が近づくと痛む、ガッツの首の傷。何かの刻印のようにも見えるのですが、これが一体いつ、誰に、何のために付けられたものなのかが興味をそそります。

このあたりは、物語が進むことで明らかになっていく…… のですが、テレビアニメ第2作に当たる本作ではその部分が少しわかりにくいかもしれません。

この謎の答えは「黄金時代篇」にあるのですが、冒頭でも触れた通り本作では大胆に省略されているからです。

もし『ベルセルク』を見ていて、「やっぱりよくわからないな」とか「もう少し詳しく知りたいな」と思うようなら、一番の解決方法はやはり原作を読んでみることですね。

当たり前ですが、原作にはその部分がしっかり描かれています。

「黄金時代篇」をどう補完するか

原作の『ベルセルク』という作品において、「黄金時代篇」の持つ意味は非常に重要だと個人的には思っています。

分厚い背景、と言えばいいですかね。「黄金時代篇」があることで、『ベルセルク』という作品が

筋骨隆々の剣士が、巨大な怪物と戦うだけのバトル漫画以上の存在

になりえていると思うんですよね。

だからこそ、原作でも約10巻分という長い期間をかけて描いていたのだと思うのですが、何度か紹介している通り、テレビアニメ第2期に当たる本作では、その部分が大幅に省略されてしまっている。

既に2度アニメ化されているし、「さすがにもういいだろう」という制作側の気持ちはわかります。

しかし一方で、もし仮に初めて触れる『ベルセルク』がこの本作(テレビ第2期)だった場合、作品の印象がだいぶ変わってしまうんじゃないかという印象は持ちました。

私は原作を読んだことがあったので、描かれていない部分についても補完が可能だったのですが、率直に言って「わかりにくい」と感じていたと思います。

視聴に当たって、「黄金時代篇」の知識が前提とされている作品というわけではないです。

とはいえ、やはり本作を十二分に楽しむためには、視聴前に何らかの形で「黄金時代篇」を知っておいた方が良さそうに思いました。

原作か、劇場版三部作が無難なところですかね。

dアニメストアやU-NEXTのような動画配信サービスだと、2023年8月の時点でテレビ放送用に再編集された劇場版三部作(2022年に『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』のタイトルで放送)が見放題にあります。

サービス加入中の方や、本作を見るために加入を検討をしている方は、そちらを見てから本作、というのが良いんじゃないかと思います。

『ベルセルク』まとめ

ベルセルク』は2016~17年にかけて、分割2クールで放送されたテレビアニメです。

原作は三浦建太郎の同名漫画で、本作以前に、

  • テレビシリーズ1作(1997年)
  • 劇場版三部作(2012~13年)

が制作されています。

ただ、原作はまだ連載中ということもあって、すべてがアニメ化されているわけではありません。本作も同様で、あくまで原作の一部になっています。

本作では「黄金時代篇」という、主人公ガッツの過去を描いた章が大きく省略されています。

ただ、この部分は『ベルセルク』という作品の非常に重要な部分なので、原作か劇場版でその部分を補ってから、本作を見始めるのが良いんじゃないかと思いました。

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タイトル『ベルセルク』
放送第1期:2016年7月1日-9月16日
第2期:2017年4月7日-6月23日
放送局WOWOW・MBSほか
話数全24話
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。