『LAST EXILE-銀翼のファム-』感想・レビュー|前作とは印象の異なるLAST EXILE(ラストエグザイル)

LAST EXILE-銀翼のファム-
GONZO 2011
監督:千明孝一
シリーズ構成:吉村清子
脚本:吉村清子、神山修一、鈴木貴昭、綾奈ゆにこ、千明孝一
キャラクター原案:村田蓮爾、堀内修、高岡じゅんいち
音楽:黒石ひとみ

OPテーマ:坂本真綾「Buddy」
EDテーマ:Hitomi「Starboard」
キャスト:豊崎愛生・悠木碧・茅野愛衣・沢城みゆき・興津和幸

今回は『LAST EXILE-銀翼のファム-』です。

GONZO制作のテレビアニメで、2011年10月から2012年3月までCBC、TBSほかで放送されました。

2003年に放送された『LAST EXILE』の続編にあたる作品です。描かれているのは、前作終了から2年後の世界。

こちらの記事でも書いたのですが、前作『LAST EXILE』は個人的にとても好きな作品です。普段ほとんどを円盤を買わない私が、Blu-ray BOXを買ってしまったくらいに気に入っています。

そんなわけなので、今回紹介する『LAST EXILE-銀翼のファム-』も、始まる前から期待大でした。

前作の放送が2003年、『銀翼のファム』は2011年と、実に8年ぶりの続編でしたからね。

ただ…… まだ見ていない方にこれを伝えるのはいかがなものかとも思うのですが、実際に始まってみると、

「ちょっと違うな」

と感じることの方が多い作品になっていました。

LAST EXILE』の魅力は、他の作品にはない独特の雰囲気だったのですが、それが失われてしまっていたんですよね。

前作とのつながりは、随所に感じるんです。主要登場人物の中にも『LAST EXILE』でおなじみのキャラクターがいますし、出番もそれなりに用意されています。

でもやっぱり、違う。制作会社や監督は同じ。他にも、前作のスタッフが残っています。それなのに、

「どうしてこんなに違っちゃったかな?」

と不思議に思うくらいでした。

まあもっとも、これは私が前作と同じものをあまりに期待し過ぎたせいもあったんだと思います。

そういう余計な先入観を排して、作品単体で見た場合には決して酷評されるような内容ではなかったとも思うからです。私自身、何だかんだ言いながら最後まで見てますしね。

ただ見る前に心構えとして、「『LAST EXILE』とは別物」という認識は持っておいた方がいいんじゃないかと思います。

なお、本記事は性質上、前作『LAST EXILE』の盛大なネタバレを含んでいます。

LAST EXILE』未視聴の方は、先にそっちを見ていただくことをおススメします。

「『LAST EXILE』は見てないけど、いきなり『銀翼のファム』を見るぜ!」

という猛者はあんまりいないと思いますが、もし仮に試みようと考えている方がいるなら、おススメはしません。

雰囲気は違っても設定や登場人物は引き継がれているので、「何だかよくわからん」という部分がポコポコ出てきてしまうからです。

dアニメストアでもDMM TVでもU-NEXTでも、『銀翼のファム』があれば『LAST EXILE』も見放題になっていると思うので、一緒に見てみてください。

(2023年8月時点ではどちらも配信ありましたが、終わってしまう可能性もあるので、申し込み前に自分の目で確認をお願いします!)

LAST EXILE』ってどんな話?という方は、こちらにレビューも書いているので、一緒に読んでいただけると嬉しいです(ネタバレなしです)。

目次

『LAST EXILE-銀翼のファム-』概要

冒頭でも触れた通り、『LAST EXILE-銀翼のファム-』は前作『LAST EXILE』の最終話から2年後の世界を描いた物語です。

主人公は残念ながら(?)、前作のクラウス・ヴァルカではありません。ファム・ファン・ファンという15歳の少女です。

クラウスとの共通点は、彼女も小型飛空艇ヴァンシップのパイロットであること。ただし、ファムが乗っているのは小型のヴァンシップで、ヴァンシップがそもそも小型飛空艇なので「小型の小型飛空艇」というよくわからない表現になりますが、本作ではヴェスパと呼ばれている乗り物です。

前作のクラウスは運び屋でしたが、ファムは運び屋ではありません。空族をやっています。

空族。聞きなれない単語ですよね。一般用語ではありません。本作の造語です。

公式HPの用語集では、次のように説明しています。

既存政府の支配を快く思わない者たちや、自国を失った者たちなどが集まって独自勢力となった存在。空中戦艦の限界高度以上の外壁に守られた高地に居住している。土地が大規模農業に適さないため、主にアデス連邦の空中戦艦を捕獲し、丸ごとあるいはパーツを転売することで生計を立てている。中には、ヴァンシップを使った物流や情報産業等に従事している者もいる。合言葉は「翼に風を!」および「追い風を祈る!」。自由な空と平和を愛している。

『LAST EXILE-銀翼のファム-』公式HP

まあ要するに、「空の海賊」みたいなものです。

「賊」ではなく「族」の字を使っているのは、ただの犯罪集団ではないことを明らかにするためでしょう。自分たちの欲求を満たすために法外な行為をしているわけではなく、主義や主張の元に集まった集団である、ということですかね。

彼らにとって重要なのは、末尾の「自由な空と平和を愛している」というところで、これは前作のクラウスやラヴィ・ヘッドとも共通しています。

まあでも、それは空族側の理屈であって、保有している空中戦艦を「捕獲」されてしまうアデス連邦からしたら、彼らは立派な犯罪集団です。「捕獲」というマイルドな表現で目を眩ませようとしていますが、やっていることは「強奪」ですからね。

舞台はプレステールではない?

ここでもう一つ聞き慣れないのが、アデス連邦です。

前作『LAST EXILE』に登場した国家はアナトレーとデュシスであり、アデス連邦なんて国は出てきませんでした。『銀翼のファム』で出てきた新しい国家なのですが、実は本作、『LAST EXILE』とはそもそも舞台が違います。

LAST EXILE』を見た方ならご存知かと思いますが、アナトレーやデュシス、それにギルドが存在していた前作の舞台は、人工天体プレステールでした。

そのプレステールから、「母なる星」へ帰還するために必要だったのがエグザイルで、『LAST EXILE』で描かれていたのはエグザイルをめぐる戦いと、その発動までです。

それからさらに2年が経過している本作は、舞台をプレステールから「母なる星」に移した物語となっています。

すなわち、アデス連邦はプレステールではなく、母なる星の国家なのですね。

帰還民によって奪われた大地を取り戻す

母なる星にはアデス連邦以外にも複数の国家が存在していて、国家間の対立も起こったりしています。

アデスはその中心にいる国家と言ってよく、強力な軍事力を背景に、周辺諸国への侵略を続けているのがこの国だったりします。

アデスの掲げる大義は、「帰還民によって奪われた大地を取り戻す」というもの。

帰還民というのは、エグザイルによって母なる星に戻ってきた人々のことです。実はプレステール以外にも母なる星から脱出していた人たちは存在していて、そこから戻ってきた人がたくさんいるのですね。

そうした人たちが作った国家を侵略し、土地を奪おうとしているのがアデス連邦です。

きっかけは王女ミリアとの出会い

アデスは、見ての通りの悪逆です。でも主人公のファムは空族なので、アデスの侵略対象にはなっていない。

直接の関係はないはずだったのですが、空族の生業である「空中戦艦捕獲」を帰還民国家トゥランの旗艦に仕掛けたことがきっかけで、トゥランの第二王女ミリアと知り合い、アデスとトゥランの戦いに首を突っ込んでいくことになります。

『LAST EXILE-銀翼のファム-』のレビュー

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明るさに目がくらむ『銀翼のファム』

前作『LAST EXILE』と同じものを期待して見始めると、

「何か、ちょっと違う」

になってしまうのが本作『銀翼のファム』であるという話を、本記事の最初でしました。

その理由は、どこにあるのか。最も大きな違いとなっているのは、「明るさ」なんだろうと思います。

銀翼のファム』は、「LAST EXILE」というには明るすぎるのですね。

前作『LAST EXILE』の良さは、暗さにありました。話の内容が、ではありません。

暗いというのは文字通りの話で、画面の明るさが控えめでした。それによってもたらされていたのが、間接照明で照らされた部屋のような雰囲気。画面が白く煙っているように見えていたのも、効果的でした。

この雰囲気が全体に落ち着きを与え、『LAST EXILE』という作品に成熟した大人の印象を与えていたのだと思います。戦争が物語の大きな部分を占めている作品であるにも関わらず、不思議な静けさすら感じる作品でした。

この前作で特徴的だった要素が、『銀翼のファム』にはない。画面は陽光に照らされたように明るいですし、ファムを始めとする登場人物たちも、非常に活発でよく喋ります。

それそのものは決して悪くはないのですが、ではこれが「LAST EXILE」かというと、やっぱり違う気がするんですよね。あの独特の、老舗のバーで感じるような熟成された雰囲気を期待していたですのが、そういうものは『銀翼のファム』からはまったく感じられませんでした。

続編ですからね。どうしても前作と比べられてしまいますし、それと似たようなところを求められてもしまいます。

そういう意味では、少々がっかりさせられる作品だったかな、というのが正直なところです。

敵役の魅力と存在感

前作『LAST EXILE』には、マエストロ・デルフィーネというとんでもない敵役がいました。

プレステールを管理するギルドという国家の独裁者に若くして上り詰めた彼女は、その権力を背景にやりたい放題やっています。冷酷で傲慢、嗜好にも歪んだところがある人物なのですが、妖艶さも備えており、その存在は作品に怪しい輝きを与えていました。

銀翼のファム』には、このマエストロ・デルフィーネほどの魅力と存在感のある敵役はいません。

デルフィーネに相当する『銀翼のファム』の登場人物は、アデス連邦の総統ルスキニアになります。若くして総統の地位を得た人物で、各国の侵攻も彼の指示の元に行われており、冷酷さという点ではなかなかのものがあります。

が、デルフィーネと比較すると、圧倒的に物足りない

ルスキニアは、あくまで「普通の敵役」なんですよね。冷酷さや苛烈さがあるのは確かなんですが、それに「理由」が伴ってしまっている。彼の場合、過去のつらい経験から得た信念が、その行動を支えています。

ルスキニアという人物をわかりやすくするという意味で、この理由付けは効果的と言えるでしょう。

一方デルフィーネには、そんなものはありません。

  • ほしいから奪う
  • 気に入らないから潰す

これだけです。

わがままで、傲慢。でもその理由のなさが、「絶対的な悪」として彼女に他を圧する存在感を与えていましたし、前作『LAST EXILE』の魅力の一つにもなっていました。

そういう「怪しい魅力」みたいなものがなかったのも、前作と比較した場合に『銀翼のファム』から感じてしまう物足りなさの要因だったように思います。

全体の動きはわかりやすくなっている

ここまで少々ネガティブな話ばかりしてきてしまいましたが、『銀翼のファム』が前作と比較して悪いところばかりだったということではありません。

銀翼のファム』では、物語の背景や全体の動きが、前作『LAST EXILE』と比較してずっとわかりやすくなっていました。

前作はそれぞれのキャラクターに焦点を当てて、一歩踏み込んだ描き方をしていたんですよね。そこが『銀翼のファム』では違っていて、もっと視点を高くした、大局的な話が中心になっていました。

全体の動きがわかりにくいのが玉に瑕と言っていい前作の不足部分だったのですが、本作はそこを修正してきていたような印象はあります。

反面、登場人物たちの描き込みが浅く、定型的になってしまったきらいがあるのも事実だったりするんですけどね。

前作『LAST EXILE』のキャラクターは登場する?

冒頭でも紹介した通り、前作『LAST EXILE』のキャラクターも『銀翼のファム』には出てきます。

第1話から早速登場するのは、ディーオ・エラクレア。主人公ファムたちとは既に知り合っている状態で登場し、出番も多いです。

話が進むと、ディーオ以外のキャラクターも出てきます。前作終了から2年が経過しているので、立場が変わっている者も多数。その違いも、ファンには楽しいところですね。

なお、気になる前作の主人公クラウスとその相棒ラヴィについてですが、一応出番はあります。

が、時間は非常に短い。他のキャラクターと比較しても、圧倒的です。

ですから、活躍は期待しない方がいいでしょう。

もう少し何かあってもいいんじゃないかと、個人的には思ってしまうくらいでした。

『LAST EXILE-銀翼のファム-』まとめ

LAST EXILE-銀翼のファム-』は、2003年に放送された『LAST EXILE』の続編にあたる作品です。

描かれているのは、前作から2年後の世界。全体的に明るさを感じる作品になっているため、前作とは少し違った印象を受けるかもしれません。

なお、「LAST EXILE」には前作と『銀翼のファム』との間にもう1つ、『LAST EXILE-砂時計の旅人-』という物語があります。

アニメではなく漫画なのですが、作画を担当しているのが『LAST EXILE』のキャラクターデザインを担当したムラオミノルなので、アニメと同じ雰囲気を持った作品になっています。

LAST EXILE』のファンなら、読んでおいて損はないかと。全2巻と短いので、すぐに読み終わります。

なお『銀翼のファム』を見るのに、『砂時計の旅人』が必須ということはありません。

読まなくてもまったく問題なく、話についていくことはできます。

タイトル『LAST EXILEー銀翼のファムー』
放送2011年10月7日 -2012年3月23日
放送局CBC、TBSほか
話数全23話(21話+総集編2話)
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。

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