『【推しの子】』感想・レビュー|衝撃の第1話90分!内容は長さに見合ったものだった?

【推しの子】
動画工房 2023
監督:平牧大輔
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ
助監督:猫富ちゃお
シリーズ構成・脚本:田中仁
キャラクターデザイン:平山寛菜

OPテーマ:YOASOBI「アイドル」
EDテーマ:女王蜂「メフィスト」
キャスト:高橋李依・大塚剛央・生駒ゆりえ・潘めぐみ・大久保留美

【推しの子】』は2023年4月から6月まで、TOKYO MXほかで放送された動画工房制作のテレビアニメです。

赤坂アカ・横槍メンゴによる同名漫画を原作としていて、「週刊ヤングジャンプ」「少年ジャンプ+」で連載中にアニメ化されました。

2023年春の話題作の一つでもあります。

内容もさることながら、放送前から積極的なプロモーションが行われていたのが本作では印象的でした。いつもならアニメの宣伝を見かけないようなところにも、メインキャラクターのアイをでかでかと描いた看板が出ていましたからね。

あれだと普段アニメに興味がない人の目にも留まりますし、ちょっと見てみようかなという気分になるんじゃないかと思います。

そうして注目を集めたうえで、第1話の放送時間が90分という異例の長さですからね。否が応でも話題になります。

ただ、第1話に関していうと「通常の3倍」という長さのはったりばかりでなく、しっかりと内容も伴ったものになっていました。あの内容は、確かに1話90分で放送する必然があったと個人的には思います。

しかし一方で、第1話が強烈すぎただけに、作品全体の評価までもが第1話に大きくよるものになってしまっている、とうのが個人的な印象でもありました。スタートダッシュに成功し過ぎた、とでも言えばいいですかね。

それでも最終話放送直後に、第2期の制作が発表されていますから、全体的な評価も決して悪いものではなかったのかなと思います。

個人的にも、第2期が見てみたい作品でした。

『【推しの子】』概要

地方都市で医師をしているゴローは、担当している患者の影響でアイドルグループ「B小町」のファンになります。

ゴローの「推し」は、センターのアイ。

そんなゴローの前にある日、アイ本人が現れます。こんな地方都市に、と驚くゴローですが、アイはある秘密を抱えており、それがゴローのところにやってきた理由でした。

そしてこのアイとの出会いが、普通の医師だったゴローの運命を、大きく動かしていくことになります。

『【推しの子】』レビュー

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インパクトのある第1話

冒頭でも紹介しましたが、『【推しの子】』はとにかく第1話のインパクトが絶大です。

最初に目に留まるのは、やはり放送時間でしょう。第1話90分というのは、聞いたことがない長さです。

初回放送枠の拡大というだけなら、『Fate/Zero』(2011-12年、ufotable)などで先例があります。

ただし、時間は60分でした。3倍の90分というのは、『【推しの子】』以前の作品ではちょっと思いつきません。

当然ですが、放送時間は実際に放送が始まる前に公表されています。『【推しの子】』ももちろん同じで、第1話が90分あるということは、放送前から話題になっていました。

それ自体がプロモーションの一つとして、成立していたわけですね。

ただ、これ自体は諸刃の剣です。中身が伴っていなければ「ただ長いだけ」という評価を食らってしまいますし、目立つことをした分、批判の声も大きくなってしまいますからね。

では、『【推しの子】』第1話は、放送時間90分に見合った内容だったのでしょうか?

これについては、おそらく『【推しの子】』第1話を実際に見た多くの人が「yes」と答えるんじゃないかと思います。

濃い内容で質も高かったですし、原作未読の私には、驚かされるような事実もありました。

第1話が描いているもの

【推しの子】』の第1話が描いているのは、アイドルグループ「B小町」のアイです。

アイは、『【推しの子】』という作品において独特の存在感を持つキャラクターです。

天賦の才を持つアイドルというばかりではなく、クセのある性格は一筋縄ではいかないものを感じさせますし、プライベートでは大きな秘密を抱えてもいます。

そのアイを、1回のエピソードで花火のように強く印象付けるのが、第1話の役割でした。そのための90分だった、と言ってもいいでしょう。

通常の1話30分の範囲でそれができていれば、それが一番良かったのかもしれません。でも、私が見た限り、とても30分で収めきれるような内容ではないんですよね。

無理にそれをしようとしたら、雑なダイジェストのようになってしまったと思います。

では、1話30分のまま3週間に渡ってやっていたらどうだったのでしょうか? その場合、内容は同じでも作品全体が間延びした印象を与えるものになっていたでしょう。特に(1話90分の場合の)第2話以降は、話が大きく変わりますからね。

第1話90分というのは『【推しの子】』という作品にとって必然だったと言っていいでしょう。

決して話題先行ではなかったと思いますね。

90分という長さから、視聴を敬遠している人もいるかもしれませんが、第1話に関しては、見ておいて損はないと思います。少なくとも「ただ長いだけ」ということはありません。

「90分って、短めの映画かよ」と感じる方もいるかもしれませんが、それこそ、映画を見るくらいの気持ちで臨んでもいいと思っています。

タイトルの本当の意味

原作未読の私が第1話を見て驚かされたことの一つに、タイトルの本当の意味があります。

これ、おそらく『【推しの子】』に触れたことのないほとんどすべての人が、正しく意味を理解できていないと思います。

実際の意味は、まったく予想外でしたからね。

「んんっ? 推しの子ってそういうこと?」というのが、第1話を見ながら初めてその意味を知ったときの反応でした。

初見の方は、おそらく全員が同じようなリアクションになるんじゃないかと思います。そのくらい、想像の斜め上を行っています。

第1話から発揮される「引き」の強さ

【推しの子】』は、エピソード終わりの「引き」がかなり強い作品です。

その特徴は第1話から既に発揮されていて、90分という長さとその濃密な内容のせいで、1本の映画を見終えたような気分になってしまう第1話のラストから、第2話以降への興味をぐっと引き留めてくれます。

そこで大きく光が当たるのがサスペンス要素なので、これは個人的には驚きを感じた部分でした。

タイトルからしてアイドルや芸能界を扱った作品だと思っていましたし、第1話もそうした内容が中心になっていたからです。

それが終盤にきて、急にサスペンスの色を帯び始めたものですから、「あれ? この作品って芸能界の裏側を描いた作品だと思っていたけど、サスペンスだったの?」と思ってしまいました。

何しろタイトルの本当の意味で、一度予想を裏切られていますからね。

ここでの驚きは、先への興味を大きくそそられるものでした。

このサスペンス要素が気になって、第2話以降も視聴を継続したというところは、正直あります。

最大の魅力はキャラクター

第1話の引きがサスペンスだった『【推しの子】』ですが、メインとなるのはやはり芸能関係の話です。

キラキラした表の顔に隠された、打算と欲望に塗れた汚い芸能界の裏事情が描かれるわけですね。

ただ、この手の話は既に週刊誌やワイドショーなんかでこれまで浴びるほど語られてきた話でもあるので、はっきり言ってそれほど目新しさは感じません。

それよりも本作で魅力的なのは、キャラクターです。

芸能界を舞台にした物語だけあって、『【推しの子】』の登場人物はほとんどが芸能人、もしくは芸能関係者です。

メインキャラクターとなるとそれにさらに若さが加わり、ほぼ全員が10代。高校生くらいの年代が多いのですが、若いからといって無垢なわけではなく、芸能界がどういうところなのかは理解しています。

大人がやるような打算的な思考も、随所に見られます。ただ、それでも彼らの印象が決してずる賢く、嫌らしいものにならないのは、彼らにはまだ、完全に業界に染まり切っていない部分も見られるからです。

青臭い、とも言えるのかもしれません。でもそこが『【推しの子】』の登場人物たちのいいところで、仕事に掛ける思いには、金儲けしか頭にない大人たちとは違った「真摯さ」みたいなものが感じられます。

主人公アクアの活躍

真摯であるが故に、傷ついたり、苦悩したりする若い芸能人たちの姿も、『【推しの子】』では描かれます。

そんな彼らを救うのが主人公アクアで、彼の活躍も本作の見どころの一つとなっています。

そうです。『【推しの子】』の主人公は、実はゴローでもアイでもなく、アクアという男子高校生なのです。

アクアは高校生ですが、芸能活動もしています。ただ、彼はそれをはるかに上回る特殊な事情を抱えており、はっきり言って普通の高校生ではありません。

若い芸能人たちを助けることができるのも、彼のその特殊事情が大きく関係しているのですが、その具体的な内容は作品を実際に見ることで知っていただきたいので、ここでは控えます。

詳しくは、第1話で明らかになります。

気になった部分

魅力の多い作品で、第2期も見てみたいと思っている『【推しの子】』ですが、いくつか気になったところもあります。

最も引っかかったのは、やたらと語られる芸能界の裏事情ですね。

アイドルの収入の実態とか、ドラマのキャスティングにおける事務所の力関係といった、週刊誌が好きそうな話題です。

これが色々なキャラクターの口から語られるんですが、正直ちょっと鬱陶しく感じました。「芸能界の(自称)情報通が、上から目線で知識をひけらかしている」ようにも感じられてしまったんですよね。

物語の都合上、そうした説明が必要だった、というケースもあったとは思います。

ただ、先ほども書きましたが、それほど目新しい内容というわけでもなく、芸能関係者でなくても何となく聞いたことがありそうな話ばかりだったので、「新しい知識を得る喜び」みたいなものも感じられませんでした。

強い言葉を使うなら、この部分が鼻につく、と感じる人もいたんじゃないかと思います。

もう一つは、ギャグです。

一応出てくるんですが、キレはいまいちです。そんなに笑えませんでした。

ただこれに関しては、『【推しの子】』はギャグアニメではないので、作品の評価とは直接つながらない部分だと思ってます。

『【推しの子】』まとめ

【推しの子】』は、2023年春の話題作です。

この作品は、とにかく第1話が一番の売りです。

ですので、「90分は長いぜ!」を理由に敬遠しないことをおススメします。

短めの映画を見る心づもりで、見てください。

引きが強いので、第2話以降も見たくなるんじゃないかと思います。特に魅力的なのは、キャラクターですね。

サスペンス部分は、正直物足りなさを感じるところはありました。

これについては、制作が決定している第2期に期待したいと思っています。

タイトル『【推しの子】』
放送・公開2023年4月12日 -2023年6月28日
放送局TOKYO MXほか
話数全11話
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。