2023年秋に放送された『星屑テレパス』。
配信全盛のこの時代に、よりにもよって「FOD独占」という荒業をやってのけたのが本作ですが、この作品の際立った特徴の一つに、
メインキャラクター4人のうち、半数に当たる2人が対人コミュニケーションに問題を抱えている
という点があります。
「2人もいたっけ?」と思われた方。いたんですよ、2人も。
誰と誰がコミュ障?
ファーストコミュ障
1人目のコミュ障、「ファーストコミュ障」は主人公の小ノ星海果です。彼女のコミュ障認定に、疑問を呈する人はいないでしょう。
- 重度の人見知りで、人とまともに話せない
- 目を見て話せない
- どもってしまう
- 自分に自信がない
といった、コミュ障の条件をほぼすべて備えています。海果がコミュ障でなければ、この世にコミュ障など存在しません。まさにコミュ障・オブ・コミュ障というべき存在です。
セカンドコミュ障
続いて「セカンドコミュ障」。こちらに該当するのは、雷門瞬です。名前は「しゅん」ではなく「またたき」で、女子です。高校一年生で、海果のクラスメートでもあります。
本作をご覧になった方の中には、彼女のコミュ障認定に異議を唱える方もいるかもしれません。確かに瞬は人見知りではないですし、目を見て話もできます。どもることもありません。自分に自信がないということもなく、本作の重要テーマである「モデルロケット製作」に関しては、他の3人に先んじて製作経験あり、自信満々なくらいです。
それでもなお、私が「雷門瞬コミュ障説」を強く主張する理由は、彼女の備えた排他的・攻撃的な性格にあります。
海果へ信じがたい暴言
初登場時に不登校であったことからもわかる通り、彼女もまた海果同様、他人との関係がうまく築けていません。海果たちに誘われて学校に来るようになり、海果が会長を務めるロケット研究同好会にも加わるのですが、それで性格が矯正されるということもなく。本作が醸し出すきらら作品に似つかわしくないギスギス感も、彼女が主要な発生要因になってしまってもいます。
モデルロケット選手権に向けた同好会活動の中では、不器用ながらも精一杯ロケット製作に取り組んでいた海果の不出来をなじり、「外で石でも拾ってろ!」と言い放つというとんでもない場面もありました。まともなコミュ力の持ち主なら、ケンカしているわけでもない相手にこんなひどいこと言えません。自分が言われたら、怖くて泣いちゃいます。
まあ、実際にはモデルロケット選手権に勝つことが同好会全員の目標で、そのためには唯一の経験者である自分が頑張らないといけない、という瞬の気負いから出た言葉であるというエクスキューズはあります。ただ、頼まれたわけでもないのにそういう責任を勝手に背負い込むというあたりにもまた、そこはかとないコミュ障感が漂うんですよね。そういう意味でもやはり、瞬には「セカンドコミュ障」の称号がふさわしいように思います。
よりヤバいコミュ障はどっち?
ぱっと見ヤバいのは、海果です。何しろコミュ障をこじらせ過ぎて、「自分の居場所は地球にはない。宇宙に出て、自分の言葉が伝わるどこかの星を探したい」とかいう妄想を抱き始めてしまっているくらいですからね。身近にいたら、ちょっと心配になるレベルです。
ただ、最後まで作品を見てみると、彼女は思ったほどヤバくないことがわかります。むしろ、瞬の方がヤバい。
特にヤバいのは瞬に、自分がコミュ障であるという認識がないように見える点です。
海果には、その自覚があります。その上で、改善しようと努力もしている。うまくいかないこともありますし、小さな成功を積み上げてようやく芽生えてきた自信を根元からへし折られる重量級の挫折も味わいはするのですが、それでも「コミュ障を直そう、直したい」という意思は揺らぎません。
挫折から立ち上がる際に思わぬ強さを見せたりもして、それがとても良かったりします。海果のヤバさが思ったほどではないというのもこのあたりが理由になっているのですが、瞬にはそういうところがあまり感じられない。
「下手糞の 上級者への 道のりは 己が下手さを 知りて一歩目」
と『スラムダンク』の安西先生も言っているように、自覚がないところに成長はありません。
自己の欠点を認識し改善に取り組んでいる海果と、現状にあぐらをかいてコミュ障の自覚すらない瞬。どちらがヤバいかは一目瞭然でしょう。今は確かに海果の方が重症ですけど、3年後には立場が逆転しているんじゃないかと思いますね。
海果が良いからこそ、瞬のヤバさが際立つ
まあもちろん、瞬のヤバさには作劇上の都合もあるんだと思います。キツイこと言うのがこの作品における瞬の役割というのもあるでしょうし、性格矯正して彼女がマイルドになっちゃったら、それこそ個性が失われておもしろくなくなってしまうでしょう。
それはそれで理解しつつ、それでも瞬に目が行ってしまうのは、海果の成長の描き方がとても良いからなんだと思います。光が鮮やか過ぎるので、影も色濃く見えてしまうってやつですね。そっちはなかなか見ごたえがありましたので、『きらら』系が苦手でない方はぜひ。
ただ本作、最初に書いた通りFOD独占で、他のサブスクではレンタルになってるみたいです。どこも大体1話220円みたいなので、全話見ようとすると220円×12話=2,640円。FODプレミアムが月額976円なので、そっちを1ヶ月だけ契約した方がおトクかもしれません。