「積録」消化日記の4回目。こっちの記事でも触れたけど、本作が『プリズマ☆イリヤ』第3期である。
- Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
- Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!
- Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ツヴァイ ヘルツ! ←今回
- Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ‼
「ドライ(3)」もあるが、そっちは第4期だ。
「ピクシブ百科事典」によると、ヘルツ<Herz>はドイツ語で、心臓・心・ハートという意味だそうだ。でも正直、だから何だという話ではある。知りたいのは何故それが追加されているのか、なのだが、そこまでは書いてなかったのでわからなかった。「心を通わせる物語だからだぜ!」みたいなことなんだろうか。でもそれを言い出したら、第1期や第2期もそれなりに通わせていたように思う。
【1日目】第1話を見る
いきなりの日常回である。
続編とはいえ、新作の最初の1話なのだから新しい展開の導入が描かれてもよさそうなものだが、そういう感じはあまりない。内容も、「海に行くための水着を買いに行く」というものだった。「夏休みに海に行こうぜ!」は、前作の『ツヴァイ!』で出てきた話だ。
あの話の続きをいきなり持ってくるということは、第3期ではなく、第2期後編と考えた方がいいのだろうか。タイトルが『ドライ(3)』でないことも、それで説明が付きそうな気がする。
でも第1話がこれだと、語りつくせなかった「日常回」をやり切るために、続編を作ったようにも見えてしまう。「あれ? これ、きらら作品だったっけ?」と錯覚してしまうほどだ。
前作でクロエ・フォン・アインツベルン(クロ)が登場して以来、深刻なほどの濃密さが発揮されるようになった「百合」描写は、本作でもしっかり登場。第1話からしっかり見せつけてきている。新展開の導入よりそっちをじっくり描いているところに、このシリーズの「こだわり」を感じる。
ただまあ、イリヤもクロも美遊も小学生なので、この部分を素直に受け入れられない人もいるんじゃないかとは思う。わかる人だけわかればいい、ということなのかもしれないけど。
義理の兄である衛宮士郎に対する「お兄ちゃん大好き!」も、最初からしっかりぶち込んできていた。これも正直、個人的にはなくてもいい部分だと思ってる。でもまあ、第1期からゆるぎない信念で使われ続けられているところを見ると、需要はあるんだろう。
【2日目】第2話、第3話、第4話を見る
第1話で繰り出してきた「いきなり日常回パンチ!」が、一過性のものでないことを強く印象付けてくれる前半3話。何とすべて日常回である。
新キャラクターが登場するわけでもなく、新展開が始まるわけでもなく、前作から引き続いたいつものメンバーが前作以上の日常ドタバタを繰り広げている。前作の「ラスボス的存在」だったあの人までが、このコミカルの奔流に飲み込まれてしまっているという有様だ。
……いやこれ、一体いつになったら本題に入るのだろう? 過去2作と同じで本作も10話までしかないんだけど、こんな調子でやっていて大丈夫なんだろうか?
物語の目的が序盤では見えていなかった前作『ツヴァイ!』と違って、本作では目指すところが既に明らかになっている。「8枚目のカードの回収」だ。
ただ、ゴールだけが見えていても意味がない。そこを目指して走りださなければ、辿り着けるはずもないからだ。繰り返すが、本作は全10話の作品だ。それがもう、4話まで消化してしまっている。
とまあ、画面のこちら側のそんな心配をよそに、イリヤたちは夏休みを遊び倒している。海ではしゃぎ、遊園地ではっちゃけ、一緒に宿題をやる過程で、クラスメートの「腐女子」デビューに直面する、という何だかよくわからないことまで起こってしまっている。
「腐女子」と夏休みは何の関係あるんだ? と思ったが、どうやらコミケでつながるらしい。「腐女子」は小学生の日常と言えるんだろうか、などとも考えたが、まあこの作品の非日常は「異空間で魔力のカタマリをバンバン打ち合う」みたいなことだから、一人の少女が腐っていく様子ぐらいは日常の範疇に含めてしまっていいのだろう。多分。
ちなみに「腐女子」の進化した姿を、「貴腐人」というらしい。まるでポケモンだ。ただれたポケモンである。
これだけ日常が続く理由の一つに、イリヤの価値観があるのはわかっている。過去2作ではっきり示されている通り、彼女が最も大事にしているのは「何気ない、いつもの日々」だ。確かにここまでのところで、そうした日々を描いていたと見ることもできるだろう。
ただまあ、これだけ続けられると段々「そういう作品なのかな」とも思えてきてしまうのも事実だったりする。実際、本題の方もちょっと忘れかけていて、第4話のアバンで軽く触れられたときに「そういえばそうだった」と思い出したくらいだった。
【3日目】第5話から第7話まで見る
第5話も元気に日常回だ。海、遊園地に続く夏休みの定番、夏祭りである。もちろん、浴衣姿での登場だ。
全10話の作品なので、第5話は折り返し地点に当たる。すなわち、作品前半を日常回のみでやりきったことになる。長い。でも第6話からは後半だ。そろそろなんじゃないの?という期待は見事に当たる。やっとである。
始まったら始まったで、展開は早い。やることはカードの回収なので、基本は第1期と同じ、「0時だョ!全員集合」からの、鏡面界に移行してのバトルとなる。第1期との違いは、前作のラスボス感はどこへやら、日常回での度重なるへんてこな登場ですっかりコメディエンヌが板についてしまったバゼットが同行していることと、クロもいること、それにしっかり熟成したおかげで、カードの英霊がとんでもない強さになっていること、の3点である。
最初のバゼットとクロのおかげで、バトルに厚みが出ている。ようやく「Fate」らしくなってきた、という感じだ。事前に予告されていたため、カードの英霊が強いことに驚きはない。ちょっと強過ぎないかね、と思わないでもないが、その正体はどう見ても「例のあいつ」なので、まあこのくらいでも納得はできる。このあたりは、『Fate stay/night』か『Fate/Zero』を見たことがあるかどうかで、変わるのかもしれない。
【4日目】第8話から最終話(第10話)まで見る
イリヤと美遊が絆を深めて、物語はまとまる。
「あれ、でもそれって、第1期で既にやってなかったっけ?」とも思ったのだが、よく見るとちょっと違っている。第1期はイリヤの物語だったけど、本作は美遊の物語になっているからだ。
美遊の正体が、ここでようやく明らかになる。第1期からメイン中のメインとして登場していたのに、ここまで正体不明の存在だったというのも考えてみるとすごい話だ。その正体はイリヤやクロに近しいもので、クラスカードの出現も彼女と結びついていることが判明。ここにそこはかとない「Fateっぽさ」を感じる。まあ、「英霊」とか「聖杯」という単語が出てきただけで「Fateっぽい」と感じてしまってるだけなのかもしれないけど。
前作では何だかよくわからないままだった養護教諭、カレン・オルテンシアの正体もここではっきりする。第3期だけでなく、シリーズ全体の種明かしみたいになっている印象だ。
イリヤも第1期と比較すると、大きな成長が感じられる。第1期では、自らに命の危険が及ぶかもしれないことに恐怖を覚え、カードの回収から離脱しようとしていた。しかし本作では美遊を救い出すために、強大過ぎる力を持つ8枚目の英霊と真正面から対峙し、ルビーやサファイヤが止めるのも聞かず、自らの身を削りながら戦うのである。別人のようだった。
こうして見てみると、この作品がここまでのシリーズの一つの集大成となっているようにも思えてくる。第1期から第3期までが一つのまとまり、というような印象だ。ただまあ、実際には第4期もあるので、そうシンプルに言い切ってしまっていいのかどうかはそっちを見てみないとわからないけど。
おわりに
ドイツ語で日常は「alltag(アルターク)」というらしい(Google先生調べ)。
日常回が連続した前半は、「これ『ツヴァイ ヘルツ!』じゃなくて『ツヴァイ アルターク!』にした方が良かったんじゃないかな?」と本気で思ったりしたが、終わってみるとやはり「アルターク」ではなかった。
第1期から始まった物語の1つの区切りが、この『ツヴァイ ヘルツ!』だったようにも思う。第1期、第2期、第3期をそれぞれ、前編、中編、後編と見ることもできそうな気はした。
ただ、それでもまだ一部の謎は残っているけど。
なお、「他の『Fate』シリーズの作品で既に登場しているんじゃないかな?」という不安を常に掻き立てられてきた、「どちら様? とたずねたくなるような、まったく見覚えのないキャラクター」は、本作では登場しなかった。
ほっとしたような、でも少し物足りないような、複雑な気分がしている。