HDDにしこたま貯まっている「ずっと前に録画したけど、見ないで放置していた作品消化計画」、今回見たのは『翠星のガルガンティア』です!
放送は2013年ですね。10年以上前です。1クール全13話が放送された後、続編としてOVA『翠星のガルガンティア 〜めぐる航路、遥か〜』が前後編で公開されました。OVAと言いつつ、こっちはテレビ放送もされています。録画したかどうか、まったく記憶になかったんですが、テレビシリーズ見終わった後にHDD掘ったら出てきましたね。しっかりチェックしていたようです。
ちなみにこの作品、今紹介した『〜めぐる航路、遥か〜』とは別に、第14話、第15話というのもOVAで制作されています。こっちはテレビ未放送話らしく、HDD探してみたのですが見つかりませんでした。
配信だと、DMM TVにレンタルがあるみたいなんですが(2025年4月現在)、今やってるのは録画作品の消化なので見てません! 負債を完済した後に、視聴を検討しようと思ってます。
というわけで『翠星のガルガンティア』を振り返っていきます!

主人公・レド少尉が揺さぶられまくる物語
一番に感じたのは、これでしたね。それも「価値観の違いにショックを受ける」というソフトなところから始まって、最後は自らの存在意義をも覆されかねない巨大地震にまで到達するエスカレートぶりでした。
途中まで、レドが異文化に触れて人間性を回復していく物語なのかと思ったんですけどね。違いました。「シリーズ構成 虚淵玄」ですからね。そんなに優しくなかったです。
拒絶ではなく、自ら歩み寄ろうとするレド
本作の時代設定は、遠い未来です。とっくの昔に宇宙への進出を果たしている人類は、「人類銀河同盟」なる組織を結成して、「ヒディアーズ」という何だかよくわからない宇宙生命体との戦いに明け暮れています。
レド少尉は、そんなヒディアーズ軍団と戦う兵士の一人。「チェインバー」というロボットに乗って戦場を駆け回っていたのですが、戦闘からの撤退時にチェインバーごと母艦のワープに巻き込まれてしまい、気が付いたら知らない星にいた、というところから物語は始まります。
レドとチェインバーが飛ばされた星にも人類はいるのですが、「人類銀河同盟」と比較すると文明はかなり遅れています。ただ、すぐに救援は来ないので、レドはしばらくこの星の人々と暮らさざるを得ない。
そこで発生するのが、レド少尉にとって初めての異文化交流です。これがなかなかいい。レドはチェインバーと一緒に飛ばされてますからね。一機だけとはいえ、テクノロジーに圧倒的な差がありますから、現地住民を武力で制圧して従わせることも十分可能だったはずです。村上水軍相手に、イージス艦で戦うようなものですからね。負けるわけありません。
でもレドは、それをしない。自ら歩み寄って、彼らに合わせようとするのですね。
この過程がまた良くて、食べ慣れない料理を出されて怯みはするものの、拒まず一緒に食べますし、「相手が海賊であっても殺生はNG!」と言われたらそれにも従います。レドは宇宙で派手にドンパチやっていた軍団の兵士なので、悪即斬が常識なのですが、それを押し通すようなことはしません。あくまで住民たちの暮らしに合わせていくのですね。
このレドの態度は、異文化交流の規範だと思うんですよね。文化に限らず、異質なものに接したすべてのケースについて同じことが言えるとも思うのですが、拒絶ではなく、受容から入る。そうして互いに理解を深めていく。
受け入れようとするからこそ、揺さぶられる
ただ、受け入れるからこそ直面する壁もあります。カルチャーショックというやつですね。御多分に漏れず、レドもこいつを食らいます。これまで自分が絶対と信じていた価値観が、実はちっとも絶対ではなかったと知るのですね。
もっとも、この段階で受ける揺さぶりはまだマイルドです。というのも、レド少尉が元々持っていた価値観って、「人間の価値を有用性だけで判断する」という歪みまくったものでなんですよね。これ自体はレド少尉がイカれた人間だから、というわけではなく、元々彼がいた「人類銀河同盟」がそうだったからというのが理由なのですが、それが現地住民たちが見せる「共存共栄」の姿によって矯正されていく。
すなわち、揺さぶりによって起こる変化が前向きなのです。レド少尉の「人間性の回復」につながっているんですよね。
ここまでで終わっていたら、この作品は「レド少尉の再生の物語」で済んでいたのだと思います。でもそうはならなかった。
後半に入ると、今度はレド少尉のアイデンティティを根底から覆すようなとんでもない事実が明らかになります。これがまた強烈。既に一度ちゃぶ台がひっくり返されている部屋で、今度は家の土台ごと持って行こうとしているようなものですからね。「そんなにやっちゃって大丈夫? 揺さぶられっこ症候群にならない?」と心配になるくらいの衝撃がありました。
加えて終盤にはさらに大きめの驚きが待っていて、とにかくレド少尉が気の毒になるくらい振り回されまくってました。こんなにひっくり返されまくる主人公も、珍しいんじゃないかと思うくらいでしたね。
相棒なんだけど、人間に寄り過ぎていないチェインバー
本作を語る上で欠かせない存在が、レド少尉の愛機チェインバーです。
基本的には「マシンキャリバー」という戦闘用のロボットなのですが、「パイロット支援啓発インターフェイスシステム」という長い名前の超高度なAIが搭載されているため、それ以外のサポートもできてしまう優れものです。言語の違う現地住民との間で、初めからレドが意思疎通ができたのも、チェインバーが通訳してくれたおかげですからね。
このチェインバー、物語の中では「人類銀河同盟」時代のレドを知る唯一の存在として、単なるサポートAI以上の役割を果たしています。
レドが悩んだり、迷ったときには相談相手にもなってくれて、もはや相棒と呼んでもいいくらいの存在にも見えてくるのですが、あくまでAIであるというスタンスは崩さない。ここがとても良くて、発言は理知的・論理的で情に流されるようなこともなく、喋り方や声にもまったく感情がこもっていません。会話はできるんだけど、相手が人間でないことを常に意識させるような描き方がなされています。
「物語が進むにつれて、チェインバーに人間臭さが出てくる」みたいなことがないのもいい。「見た目はロボットだけど、中身は人間」みたいな、エセAIとは一線を画した存在です。
ただ、ではチェインバーが最後まで変化がないのかというと、そういうわけでもないんですよね。実は、現地での暮らしやレド少尉の変化の影響をしっかり受けている。その集大成みたいな場面が最後に現れてくるんですが、ここは本当に良かったですね。彼がレドの最高の相棒だったことを改めて感じさせてくれて、グッとくるものがありました。
マスコットキャラクター賞第1位の魅力
「ニュータイプアニメアワード2013」で、チェインバーは「マスコットキャラクター賞」第1位に輝いているようです。「メカデザイン賞」もあるのですが、そっちではなかったみたいですね。
「マスコットキャラクター賞」の歴代受賞者には、「キュゥべえ(魔法少女まどか☆マギカ)」や「ホッツさん(機動戦士ガンダム 水星の魔女)」なんかがいるみたいです。この並びに入れられるのもなかなかという感じがしますが、本編見てると、そうした評価にも意外にうなづけてしまったりするんですよね。
戦闘用ロボットだし、バトルシーンもあるんだけど、「マスコット感」もしっかりありました。むしろそっちの方が強いくらいでしたね。ふるまいもそうだし、頭部と脚部が大きめのデザインも関係していたのかもしれません。
なぜか公式HPの「メカニック/生物」ページには載っていないのですが、制作会社であるProduction I.GのHPには掲載されているので、未視聴の方はぜひ一度見てみてください。
魅惑の太ももにうっとりさせられること請け合いです。
最後に
テレビ13話で結構きれいに終わっている作品だったので、続編(OVA『翠星のガルガンティア 〜めぐる航路、遥か〜』)があるのは意外な感じがしました。テレビシリーズの後日談になっているので、気に入った方はぜひ。こっちもDMM TVでレンタルがあるみたいです(2025年4月現在)。
逆に 『〜めぐる航路、遥か〜』の終わり方は、その先がありそうな感じでした。実際テレビ第2期の話もあったみたいなんですが、結局制作されなかったそうです。
代わりに小説が出ているみたいですね。
Amazonの商品紹介見たら、思いっきり「幻のTVシリーズ第2期が小説になって登場!」と書かれていました。