2024年12月現在、テレビシリーズの『プリズマ☆イリヤ』の最後に当たるのが、本作『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ ドライ!!』である。
この後に劇場版が制作されているので、アニメとしてはこれで終わりではない。ただ、この視聴日記の初回でも書いた通り、現在の僕の最優先課題は、たまりにたまった録画の消化になってる。『プリズマ☆イリヤ』の続きを見るために、新たにどこかのサブスクと契約するつもりは、今のところない。そのため本作で、『プリズマ☆イリヤ』の視聴はひとまず終わりとなる。後ろ髪引かれる気分だが、仕方がない。
一応「積録」HDDの方も洗ってみたのだが、劇場版は録画されていなかった。無念。
本作『ドライ!!』は、第4期に当たる。前回の最後に「第1期から始まった物語の1つの区切りが『ツヴァイ ヘルツ!』(前作)だったのかもしれない」というようなことを書いた。
それを裏付けるかのように本作は、第3期までとは少し印象の異なる作品となっていた。
【1日目】第1話と第2話を見る
展開が速い
序盤でまず感じたのは、展開の速さだ。
『プリズマ☆イリヤ』と言えば、ふわっとした立ち上がりが特徴だった。前作などは、「一体、いつになったら本題に入るんだ?」とやきもきさせられたものである。
だが本作からは、それを感じない。
理由は、「日常回」が出てきていないことだ。前作までの『プリズマ☆イリヤ』の「ふんわりとした立ち上がり」は、やたらと多い日常回が原因となっていた。本作では、それが今のところそれが出てきていないのである。
それもそのはず、第1話Bパートで主人公イリヤは、別の世界に迷い込んでしまっているのである。さすがに異世界では「日常」はできない。異世界にいる、ということがもう日常ではないからだ。
おまけにいつも一緒にいるおなじみのメンバーとも、離れ離れになってしまっている。これでは日常回をやれ、という方が無理な話だろう。
新キャラクターも早速登場
展開の速さを感じさせたもう一つの理由に、第1話にして新キャラクターが3人も登場していることがある。
この差も大きい。前作『ツヴァイ ヘルツ!』などは、全編通してほぼ「いつもの面々」だったからだ。
新キャラ3人のうち2人、ベアトリス・フラワーチャイルドとアンジェリカは、イリヤたちとは敵対する勢力に所属しているようだ。「敵対勢力」という存在も、『プリズマ☆イリヤ』では珍しい。
ベアトリスとアンジェリカの声に、『ハヤテのごとく!』を思い出す。ベアトリスの声は釘宮理恵、アンジェリカは白石涼子だ。ベアトリスの方はどうやら戦闘狂という設定らしい。このタイプのキャラクターを釘宮理恵の声でやられると、どうにも変な気分になる。おかしな病気にかかっていないとよいのだが。
新キャラクターと言えば、第2話ではあの神父も登場していた。『Fate stay/night』、『Fate/Zero』でおなじみの、あの人である。第4期にしてようやく初登場となったが、神父ではなく、『stay/night』や『Zero』を見ていた立場からすると考えられないコミカルな役を与えられていたのでびっくりした。
外伝とはいえ、両作に出てきていた他のほとんどのキャラクターたちは、元の作品と大きく乖離しない姿で登場していた。どうして彼だけこんな仕打ちを? と逆に不思議に思ってしまうくらいである。 過去の作品でのふるまいがあまりに鬼畜だったので、その報いとしてこういう役に転生させられてしまったのだろうか。それともこれは世を忍ぶ仮の姿で、どこかで本性を現すのだろうか?
どっちもありそうな気がするが、今はまだ、どちらとも知れない。
【2日目】第3話と第4話を見る
イリヤと行動を共にする仲間がいつもと違うことに、新鮮さを感じる。クロもいなければ美遊もおらず、凛やルヴィアはもちろん、ルビーとサファイヤすらいない。
こんな状況のイリヤは、第1期第1話以来かもしれない。
イリヤと一緒にいるのは、ギルと名乗る金髪の少年と、田中と呼ばれるピンク色の髪の女だけだ。どちらもおなじみとは呼び難いメンバーである。田中に至っては、何者なのかもまったくわかっていない。
残念なのは、新しい風を吹き込んでくれたこの3人体制がそんなに長くは続かなかったことだ。早々に、ルビーとの再会が果たされてしまうのである。
ただまあ、この点については情状酌量の余地はありすぎるくらいにある。他の仲間はともかく、ルビーなしで話を進めるのはさすがにツラいだろう。カレイドステッキ(本シリーズにおける魔法の杖で、人の言葉をしゃべる)であるルビーがいないと、イリヤは変身できないし魔力も使えないのだ。そんな状態が長く続くのは「魔法少女もの」としてはありうべからざる状況と言っていいだろう。せっかく見せ場になりそうなバトルが多めに用意されているのに、主人公が戦闘能力ゼロで逃げ惑うことしかできないというのでは、さすがに締まりがなくなってしまう。
そんなわけで、多少ご都合主義に見えてもルビーとの早期の合流については許容できるところがあった。
ところが実際には、ルビーと再会したすぐ後にもう2人、いつものメンバーとの合流もあった。これはさすがに、ちょっと早かったかなと感じてしまった。ルビーだけが加わった、3人+1本体制をもう少し見てみたかった気がしたからだ。
もっとも話数やこの先の展開もあるだろうから、これも実際には仕方がないところだったのかもしれない。
【3日目】第5話と第6話を見る
過去3作は全10話だったが、本作は少し長めの全12話である。これについては本作が2話延びたというより、過去3作が2話短かったという方が正しいような気もする。いずれにしても、このあたりがちょうど中盤だ。
ここまでで既に、前作までひと味違った目まぐるしさを見せている本作。ここに来てもなお、それは続いている。またまた新キャラクターが登場するし、ラスボスとの不期遭遇戦も始まってしまうのだ。
新キャラクターはエリカという名の少女で、何の脈絡もなくいきなり出てくる。「自分の本心と真逆のことを口にする」という謎のクセがある少女らしい。こじらせたツンデレみたいなものなのだろうか、とも思ったが、正直これの良さはよくわからなかった。こういうのもやはり、需要があるのだろうか?
「いきなりラスボスとのバトル!」は、実際のところそれほど珍しい仕掛けでもない。アニメや漫画ではしばしば用いられるラスボスの強さを事前に見せつけておくことで、乗り越えるべき試練がいかに困難なものであるかを示す手法の一つだからだ。「私の戦闘力は53万です」(『ドラゴンボール』)なんかが、有名だろう。
ここで重要なのは「圧倒的な強さを見せること」だ。本作でもしっかりやっていた。クロ、バゼット、それにセイバーをインストールしたイリヤが束になっても歯が立たないというだけでなく、エクスカリバーを素手で受け止める、という離れ業まで見せていたのはかなり良かった。
【4日目】第7話から第10話まで見る
「異世界」の有効活用
視聴のペースを少し上げ、中盤から終盤の入り口まで一気に見る。第3期までは10話が最終話だったが、本作はそうではない。あと2話、残っている。
ここで目を引いたのは、「ぬいぐるみ化したイリヤ」だ。
元々このシリーズ、変身は多い。「魔法少女もの」である上に、英霊を「インストール」したときにも髪型や服装が変わるからだ。本作でも既に、ランサーをインストールしたイリヤの珍しい姿を見せてくれてはいた。
ただ、ここで登場した「ぬいぐるみイリヤ」は、そういうのとは一線を画した姿だったように思う。ぬいぐるみになる、というのは、これまで見せてきた「変身」よりもファンタジー色が強いからだ。
シリーズ第4期に当たる本作は、異世界を舞台にした物語である。実際には、元の世界とまったく異なっているわけではなく、酷似した「並行世界」と呼ぶ方が正しい世界ではあるのだが、それでもやはりイリヤたちが元いた世界と同じではない。よく似てはいても、イリヤたちにとってはやはり異世界であり、ファンタジーなのだ。
そしてファンタジーだからこそ、「ぬいぐるみになってしまう」という事態もすんなり受け入れることができたのだと思う。これを第3期までのような、イリヤたちにとって現実の世界でやっていたら、もっと違和感が強くなっていただろう。
そういう意味では、異世界だからこそうまくいった仕掛けだったんじゃないかと思う。舞台ををうまく活用していた。
揺らぐ正義
もう一つ目を引いたのは、イリヤが無批判で信じていた「自分たちの正義」に揺らぎが生じたことだ。実は自分たちの方が悪だったのかもしれない、と思わされるのである。
ここもまた、第3期までではできなかったところだ。この仕掛けを使うには、「利害の衝突する敵対勢力」の存在が必要になるからだ。第3期までの『プリズマ☆イリヤ』にはそれがいなかった。でも、第4期にはいるのだ。
この時の態度としておもしろかったのは、クロだ。
彼女はアンジェリカの明かした「こちらの世界の真実」に対して、理屈で応じようとしないのである。
合理的に判断すると、アンジェリカたちの掲げる正義の方が正しいように見えてしまう。でもクロは、あえてそちらの理屈には耳を貸さず、自分たちの主張を貫くことに徹するのだ。
まあ、実際のところ無理はあるし、納得感もない。さすがにそれで押し切ることは無理なので、最終的にはイリヤが別の案を持ち出して、それが彼女たちの方針ともなる。
ただ、この正論を無視して強引に自分を貫こうとする態度はクロやイリヤたちの方に悪者感が出て、個人的にはおもしろかった。
【5日目】第11話と最終話(第12話)を見る
残りまくった謎
3期までにはなかった、第11話と第12話である。だが結論から言うと、物語は終わっていない。何のための延長だったのか、と言いたくなるところだ。キリのいいところまで描くだけでも、2話分の増量が必要だった、ということなのだろうか。
一応、第7話あたりから始まった戦いに区切りはつく。第1話で掲げた目的も達成されはする。そういう意味では、確かに物語として最低限の着地はできてはいる。
ただ、謎は残りまくっている。
まずは田中だ。途中、忘れられている時間はあったものの、最終段階では極めて重要な役割を果たした彼女だが、結局何者なのかわからずじまいだった。本作最大の謎と呼んでいい存在だっただけに、ここは知りたかった。
神父もそうだ。割と早めに、ふざけてるのか真面目なのかわからない姿で出てきたが、結局あれに何かの意味があったのかどうかもわからないままになってしまっていた。何も描かれなかったということは、あれが彼のこの世界の姿だということになるのだろうか?
そうなってくるといよいよ「 過去の作品でのふるまいがあまりに鬼畜だったので、その報いとしてこういう役に転生させられてしまった説」が現実味を帯びてくる。
その他、アンジェリカとベアトリスにも何か秘密がありそうだし、エリカもなんだかよくわからなかったし、ラスボスとの決着もついていない。あちこち不完全燃焼のまま残される形となってしまっている。「続きは劇場版で!」ということなのだろうが…… 既に書いた通り、劇場版は「積録」の中にないので、真相を知るのは大分先になってしまいそうである。無念。
どうしても「日常」は盛り込まずにはいられないらしい
最後の最後、第12話Bパートでは、戦いが終わった後に、先述した衛宮家のお屋敷で過ごす時間が描かれていた。「回」でこそないものの、ここは「日常」と呼んでいいところだったと思う。
直前までのバトルと比べるとかなり温度差があるし、正直なところそこまでして「日常」を盛り込みたいのか、と思わされた部分ではあった。ただまあ、第3期でも同じようなことはやっていたし、実際本当に「そこまでしてでも盛り込みたい」場面なのかもしれない。
イリヤが最も大事にしているのが「日常」であることは、シリーズ通して語られてきている。舞台が並行世界で、かつ完結していない(元の世界に戻れてもいない)本作ではさすがにそれが語られることはなかったが…… でもだからこそ、入れておきたいということなのかも、という気はしている。
おわりに
『プリズマ☆イリヤ』のテレビシリーズは、本作がひとまず最後になる。
調べてみたところ、この後は劇場版が2作とOVAが1作が続くようだ。
- 劇場版
-
- 『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』
- 『劇場版Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女』
- OVA
-
- 『Fate/kaleid liner Prisma☆Illya プリズマ☆ファンタズム』
劇場版はどちらも総集編ではなく、新作らしい。『雪下の誓い』がテレビ第4期の続きになるみたいだ。また、『Licht 名前の無い少女』は、続編の制作が発表されているとのこと。テレビ4期分で結構見た気になっていたが、まだまだ先は長いようだ。