「おもしろくない」ことを期待するという暴挙【RWBY Volume 1-3: The Beginning】

録画した作品がしこたまたまっているHDDの中に、奇妙なタイトルのアニメがあった。

『RWBY Volume 1-3: The Beginning』

「Volume 1-3」って何? と思って調べてみたところ、どうやらアメリカの会社が制作した『RWBY』というWEBアニメのシリーズがあるらしい。その第1~3シーズンを編集して全13話に仕立て上げたのがこの作品、ということがわかった。

「わかった」と得意気に書いてみたが、そもそも自分で録画した作品である。初めから詳細を把握せずに録ったのか、あるいは放送から8年も経っている(本作の放送は2017年)せいで記憶が消えてしまったのか。今となっては確かめようもないが、どちらにせよ情けない話である。

公式サイトによると、2025年6月現在、『RWBY』は第9シーズン(Volume 9)まで公開されているらしい。『RWBY Volume 1-3: The Beginning』は第3シーズンまでの編集版だから、全体の半分にも届いていないことになる。

ここで、ちょっと迷った。

「この作品がおもしろかったら厄介だな」と思ったのである。

おもしろいのに厄介というのも変な話だが、その場合、きっと第4シーズン以降も見たくなってしまうだろう。

しかし、そっちは録画がないのだ。

配信はあるようだが、今はHDDに録画した作品の方を優先したいと考えている。とにかく、たまりにたまっているからだ。10年以上前に録画して一度も見ていない引きこもりみたいな作品が、ゴロゴロしているのである。

この状況で配信に手を出すなんて、正気の沙汰ではない。莫大な負債を必死になって返済している最中に、新たな借金を始めるようなものだ。

そんなわけなので、せっかく発掘した『RWBY Volume 1-3: The Beginning』ではあるものの、「果たして今、この作品を見始めて良いものだろうか」と結構本気で考えてしまった。

今振り返ってみると、大変バカバカしい時間である。迷うくらいなら、後回しにすればいいだけだからだ。

日本のアニメで、海外ドラマをやっている

しかし何を思ったのかこのときの僕は、「見始める」方を選択していた。

これは結果的に、「続きが気になるほど、おもしろくはないだろう」に賭けたことになる。我ながら、失礼極まりないふるまいをしていると思う。

ただ実際に見始めてみると、これがまた何とも奇妙な感覚を覚えさせる作品であった。

登場するキャラクターは日本のアニメ風なのに、演出は日曜日の夕方にEテレでやっている海外ドラマなのである。

実に、変な感じだった。感覚としては、「日本の着物を着ている白人や黒人を見たとき」が近いのかもしれない。

それ自体は、別に悪いわけではない。白人や黒人が日本の着物を着たって何も問題がないように、日本のアニメキャラクターに海外ドラマ風味の演出を施したって、問題はない。そんなの当たり前だし、頭ではわかっている。

わかってはいるのだが、強烈な違和感を覚えてしまうのだ。これはもはや理屈ではなく感性の問題なのである。頭で理解できても、心がちっとも納得しないのだ。物語が進めば慣れるかも、とも思ったが、そうはならなかった。とにかくそっちにばかり目が向いてしまって、物語がちっとも頭に入ってこない。

こうなってくると生じるのは、自分にこの作品は合っていないということなのかもしれない、という疑いである。僕にとってこの作品は、相性が悪かったのかもしれない。

「途中で切る」が苦手

普通なら、これは哀しい事実だ。しかし本作の場合は、そうとばかりも言えなかった。

「賭け」に勝てるからだ。

作品との相性の悪さが、僕のギャンブルでは好都合になるのである。自分で書いていてなんだが、実に変な話だと思う。

ただ、ここでまた、僕の面倒くさいところが出てしまった。

どんなに「おもしろくない、自分には合わないと思った作品でも、一度見始めたからには最後まで見ないと気が済まない」という、何のためなのかよくわからないこだわりが発動してしまったのである。

こんなツイートをしたこともあるのだが、「途中で切る」というのがとにかく僕は苦手だ。

一度見始めた作品は、最後まで見てしまわないと気持ち悪いのである。

というわけで、既に相性の悪さが露呈している本作もリタイアはしなかった。

幸運だったのは、本作はバトルやアクションのシーンが結構良かったことである。大抵の作品は「完走」が目標になった瞬間、視聴が「娯楽」から「修行」へと変貌するのだが、本作はそうならずに済んだからだ。

ただ、「賭け」の側面から考えると、リタイヤせずに完走を目指したこのこだわりは失敗だった。

終盤に差し掛かる第10話あたりから、急激に物語がおもしろくなってきてしまったのである。

「おいおい、マジか?」と心の中でつぶやく僕を尻目に、物語はどんどん盛り上がっていった。こちらも目が離せなくなってしまい、あれほど気になっていた違和感もすっかり吹き飛んで、もうどうでもよくなってしまった。

ラスト4話はインターバルを挟まず、一気に駆け抜けた。

そうしてすべて見終えてから「ああ、しまった」と思った。見事に『RWBY』の第4シーズン以降が、見たくなっていたからである。

おもしろい作品と出会うことこそ、無上の喜び(のはず)

こうして僕は、新たな悩みを抱えることになってしまった。

だが、あの日あのときあの瞬間、あの「合わないな」と思ったときに視聴を中断しておけば、とは今でも思わない。

それをしなかったからこそ、あの終盤の盛り上がりに辿り着くことができたからだ。

アニメも映画も小説も、おもしろいと思える作品と出会うことこそが、無上の喜びである。

だからこそ、これで良かったのだ。

……と思い込むことで、ギャンブルに敗れた自分を何とか納得させようとしている。

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