『ラブライブ!サンシャイン!!』感想・レビュー|見るべきところを誤ると、前作の二番煎じに見えてしまう

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「ラブライブ!」シリーズの一番の特徴は、スクールアイドルの存在だ。

スクールアイドルとは、部活でアイドル活動を行っている女子高校生のことである。「ラブライブ!」シリーズが新たに作り出した単語だと思うのだが、とにかくそういった存在を作品の中央に据えている。

スクールアイドルは、営利を目的としているわけではない。といって、「ご当地アイドル」のように、自分の属するコミュニティの広報が一番の目的、というわけでもない。

彼女たちの活動目的の一つは「自分たちが輝くこと」である。少々自己陶酔が過ぎるように思えるかもしれないが、実際にはそれほどでもない。

何故なら「輝きたい」と思っているのは、どこかにコンプレックスを抱えていて、自分にスポットライトなど当たるはずがない、と思い込んでいた普通の少女たちだからである。「輝きたい」は、「成長したい」と置き換えることもできるわけだ。

スクールアイドルの目的には、「ラブライブ!」の優勝もある。「ラブライブ!」とはスクールアイドルの全国大会のことで、硬式野球部でいうところの、甲子園に当たる。この大会に出場し、優勝することが、前作『ラブライブ!』及び本作『ラブライブ!サンシャイン!!』に登場するアイドルグループの目標となっている。

「目指せ、全国制覇!」とそれに向けた努力と研鑽の日々を描くのは、スポーツを題材とした「部活もの」の定番だ。この定型を「アイドルもの」にそっくりそのまま流用できるのは、「アイドル」に「スクール」を融合させた「ラブライブ!」シリーズならではと言えるだろう。

ただし、問題もある。わかりやすい型があるだけに、シリーズものになった場合、二作目以降が二番煎じになってしまう恐れがあるのだ。

事実、本作『ラブライブ!サンシャイン‼』にも、前作『ラブライブ!』の焼き直しに見える部分はあった。

大まかな筋は前作『ラブライブ!』と同じ

シリーズ一作目に当たる『ラブライブ!』では、主人公高坂穂乃果がスクールアイドルグループ「μ’s」を結成し、「ラブライブ!」で優勝するまでの道のりが描かれている。

メンバーを集めて友情を深め、挫折を乗り越えながら成功をつかみ取っていくその物語は、「部活もの」の王道に沿っていた。ただ、一度これを使ってしまっているので、二度はさすがに使えない。では次はどうするのか、というのが、シリーズ二作目に当たる『ラブライブ!サンシャイン‼』で注視していたところだった。

結論から言うと、物語の大まかな筋は同じだった。そのためここだけ切り取ると、前作の焼き直しのようにも見える。

だが、それで本作が退屈だったかというと違っていた。その類似はあまり気にならなかった、というのが正しいだろう。

これについては、「本シリーズが何を見せる作品なのか」ということが関係していたように思う。

一番の魅力はスクールアイドル

「ラブライブ!」シリーズで見るべきなのは、言うまでもなくスクールアイドルだ。本作でいうなら、主役アイドルグループ「Aqours」とそのメンバーということになる。

彼女たちをいかに魅力的に見せるか、が、作品にとっての最重要事項だ。そしてこの点において、『ラブライブ!サンシャイン‼』は十分成功していたと感じる。

「Aqours」のメンバーそれぞれの個性はよく伝わってきたし、アニメ以前に『ラブライブ!サンシャイン‼』にまったく触れたことのなかった私からしても、一人一人がとても魅力的に映ったからだ。

おおよそのストーリーが似通っていることなど、些末な問題としか思えなかった。むしろ似通っていたからこそ、本来の目的をすんなりと達成されたのではないか、という気さえした。物語がシンプルでわかりやすいものだったからこそ、キャラクターに集中することができた、とも考えられるからだ。

この仕掛けは、「Aqours」のメンバーに魅力がなければ成立しないものだが、これについても十分クリアしていたと思う。主役のスクールアイドルグループ「Aqours」のメンバーは、前作「μ’s」のメンバーとはまったく個性の違う9人だったし、ストーリーと違ってキャラクターから、二番煎じの印象は全く受けなかった。

実在する地域を舞台としている

「ラブライブ!」シリーズでは、実在する地域を物語の主な舞台としている。

前作ではそれが秋葉原で、本作では静岡県沼津市だった。ただ、改めて考えてみると、これにはあまり必然性がない。スクールアイドルという存在自体が虚構性の高いものであり、物語にもそれほど強い現実感は求められていないからだ。

リアルを求めるなら、スクールアイドルという存在はおそらく成立しえないだろう。

劇中では、歌とダンスの練習だけに留まらず、

  • 作詞・作曲
  • 振り付けの考案
  • 衣装の制作
  • ステージの準備

といった、アイドル活動に必要な作業すべてをスクールアイドル自身が実施しているが、高校生の部活動の範囲でこれらすべてをこなすのは簡単ではない。おそらく、不可能なのではないかと思う。外注まで視野に入れれば実現可能にはなるのかもしれないが、その場合今度は費用面の課題に直面する。

もちろん、こんな話は野暮以外の何物でもない。スクールアイドルがフィクションであることなど見ている側は百も承知だし、それを暗黙の裡に受け入れて作品を楽しんでいるからだ。

しかし、裏を返すとそれは、作品の舞台が架空の町であったとしても問題ない、という理屈にもつながる。

それでも敢えて、実在の地域を舞台としている理由は、どこにあるのだろうか。

プロジェクト全体を考えたときに有用

虚構性が高いからこそ、現実とのつながりを強調したいというのは、理由の一つとしてあるように思う。

我々が生きる現実世界とのつながりを作るのに、実在の地名を利用するという手段は簡易だが、効果的だ。

アニメ単体で見た場合は、既に書いた通りそうしたつながりは必須とは思えない。元々フィクション性の高い題材を扱った物語だからだ。地域とのコラボレーションは期待できるかもしれないが作品そのものとは関係がない。

実在の地名や地域が架空と現実の差を埋める

「実在する地域・地名」が意味を持つのは、むしろ「ラブライブ!」というプロジェクト全体に目を向けたときだ。

「ラブライブ!」プロジェクトの展開は、アニメやマンガといった架空の物語ばかりだけに留まらない。主役のスクールアイドルグループを演じた声優たちは、現実世界でアイドルグループの活動も行っている。グループ名は、劇中のスクールアイドルたちと同じだ。『ラブライブ!サンシャイン!!』なら「Aqours」になる。

アニメは架空だが、声優の活動は現実のものなので、当然ながら両者には乖離がある。だが、グループ名を同じにしていることからもわかるように、両者は極力近い存在であることが理想だ(ベストは同一化)。

実在の地域や地名は、その差を埋める一つの要素として働く。現実の地名や風景がアニメに頻繁に登場することで、両者の距離はぐっと縮まるのだ。アニメのキャラクターたちが、現実の世界に存在するような錯覚さえ与えられる。

「沼津色」強めの『ラブライブ!サンシャイン‼』

「ラブライブ!」シリーズは虚構性の高い物語だが、プロジェクトには、現実世界での活動もしっかりと含まれている。だからこそ、架空の物語の中で、現実とのつながりを強調しておきたかったのだろう。そのための手法の一つが、実在する地域を舞台にすることであり、その地名や風景を登場させることだったのではないか、という気がする。

なお、本作『ラブライブ!サンシャイン‼』は、特に沼津という地域を前面に押し出しているように感じられた。

もはやご当地アイドルと呼んでもいいのではないか、と思えるくらいで、その甲斐あってか、地域とのコラボレーションは盛んなようだ。アニメ終了から時間が経過した現在(2022年)も、その活動は続いている。

もう一組のスクールアイドル

ラブライブ!サンシャイン‼』で目を引いたのは、もう一組のスクールアイドル「Saint Snow(セイントスノー)」の存在だ。

サブキャラクターながら非常に出番が多く、しっかりとしたライブパートまで用意されている。

前作にも「A-RISE」がいたが

前作にも、主役である「μ’s」以外のスクールアイドルとして「A-RISE」が登場した。だが、「A-RISE」は「Saint Snow」ほど出番はなかったし、物語への絡みも多くはなかった。

「Saint Snow」は、立場も「A-RISE」とは異なっている。登場した時点で既に確固とした実績を残していた「A-RISE」は、主役アイドルグループ「μ’s」にとって、長く憧れの存在だった。最終的には対決することになるのだが、「μ’s」との関係がライバルと呼べるようになるのは、物語も後半に入ってからだ。

一方「Saint Snow」は、立場としては「Aqours」と似たところにいる。実力はあっても「A-RISE」のような実績のない「Saint Snow」は、これから階段を駆け上がろうとするポジションにいるからだ。実力に差はあったものの、当初から「Aqours」のライバルとして意識される存在であった、と言っていい。

しかも両者の関係は、それだけに留まらない。

ライバルであり、戦友でもある

ライバルとはいってもその関係は良好なものであり、「ラブライブ!」の舞台以外でも交流はある。互いの地元を訪れることもあるし、「Aqours」のメンバーは「Saint Snow」の自宅にも上がっている(「Saint Snow」は北海道のスクールアイドル)。

「Aqours」と「Saint Snow」は競い合うだけの関係ではなく、時に支えあいながら、互いを高めあっていく関係なのだ。

ライバルであり、戦友でもあるというのが、正しいのかもしれない。

妹同士が妹ならではの悩みに共感するエピソードなども存在する。

ライバルであり、戦友でもあると呼ぶのが、両者の関係としてふさわしいだろう。

こうした関係は前作には見られなかったもので、「ラブライブ!」シリーズの新たな要素と感じた。特に、「Aqours」との共同楽曲まで登場したのには新鮮な驚きがあった。

ラブライブ!サンシャイン‼

放送第1期:2016年
第2期:2017年
劇場版:2019年
話数第1期:全13話
第2期:全13話
劇場版
制作サンライズ
監督酒井和男
シリーズ構成花田十輝
脚本花田十輝
キャスト伊波杏樹
逢田梨香子
諏訪ななか
小宮有紗
斉藤朱夏
小林愛香
高槻かなこ
鈴木愛奈
降幡 愛
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。