今回は、『ガンダムビルドファイターズ』(2013年 サンライズ)を取り上げます。
- ガンプラを題材にすることのおもしろさ
- すっきりとしたわかりやすい物語
- 「ほぼ本物」のガンプラバトル
『ガンダムビルドファイターズ』を見た率直な印象は、非常にシンプルな物語だった、というものです。
これはおそらく、メインターゲットを小中学生に設定しているからでしょう。
入り組んだ設定やどろどろとした人間関係はなく、善悪もはっきりしていて見やすい作品でした。
難しいことは考えず、気楽に物語を楽しみたいという人には、ぴったりだと思います。
個人的には、「ガンプラ(ガンダムのプラモデル)を物語の題材にしているところ」に一番のおもしろさを感じました。
『ガンダムビルドファイターズ』の概要
ガンダムビルドファイターズ
放送 | 2013-14年 |
話数 | 全25話 |
制作 | サンライズ |
監督 | 長崎健司 |
脚本 | 黒田洋介 |
キャスト | 小松未可子 國立幸 石川由衣 佐藤拓也 |
『ガンダムビルドファイターズ』を語る上で避けて通れないのが、ガンプラバトルです。
というのも、『ガンダムビルドファイターズ』という作品は、
- ガンプラ大好きイオリ・セイ
- どこからともなく現れた謎の少年レイジ
という二人の主人公がコンビを組んで、「ガンプラバトル世界大会」に挑む姿を描いた物語だからです。
ガンプラバトルとは、
ガンプラを操縦して対戦する競技
のこと。
ガンプラ自体は動力のない単なる「ガンダム」のプラモデルなので、実際には動きません。
しかし『ガンダムビルドファイターズ』では「GPベース」という専用のシミュレーション装置にセットすることで、操縦することが可能になっています。
ガンプラを動かしているのはプラフスキー粒子
「自分の作ったガンプラを操縦して対戦する」という設定は、もちろん架空のものです。
ただ、『ガンダムビルドファイターズ』独自のもの、というわけでもないのですね。
本作からさかのぼること30年前、1980年代の『コミックボンボン』に『プラモ狂四郎』という看板作品がありました。
その中で、既にこの設定は登場しています。
本作も、その流れを汲む作品と言っていいでしょう。
『ガンダムビルドファイターズ』で独特なのは、「ガンプラが動く技術的な根拠」です。
「プラフスキー粒子」という架空の粒子が重要な要素となっているのですね。
公式サイトでは、次のように説明されています。
ガンプラバトルは、バトルシステム上で行われる。
作ったガンプラの製作データが納められている『GPベース』とガンプラを、バトルシステムにセットすると、システムから『プラフスキー粒子』と呼ばれる特殊粒子が散布される。
10年前に発明されたこの粒子は、ガンプラの素材となっているプラスチックに反応する性質を持ち、外部から粒子を流体的に操作することができる。
また、粒子変容効果により、ビーム兵器や爆発などのエフェクトが加えられ、その臨場感はリアルのそれに匹敵する。
プラフスキー粒子の存在が、動かないガンプラに命を吹き込み、究極のガンプラバトルを可能にしているのだ。
出典:「ガンダムビルドファイターズ」公式サイト
そして実はこのプラフスキー粒子が、物語にちりばめられたいくつかの謎を解くカギになっていたりもします。
『ガンダムビルドファイターズ』感想1:ガンプラを題材にしているおもしろさ

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『ガンダムビルドファイターズ』から感じたおもしろさに、
ガンプラという「架空の物語に基づいた玩具」を作品の中心に据えていること
があります。
ガンプラは、ガンダムのプラモデルです。ガンダムあってこそのガンプラですから、ガンプラが存在している世界には当然『ガンダム』という物語も存在していることになります。
この点は『ガンダムビルドファイターズ』も同様で、主人公イオリ・セイたちが『ガンダム』を語る場面は何度も登場します。
ただ、『ガンダム』は当たり前ですが、現実ではありません。あくまで、架空の物語です。
そしてそれは、『ガンダムビルドファイターズ』も同じです。
『ガンダム』は架空の物語で、『ガンダムビルドファイターズ』もやはり架空の物語。
ということはすなわち『ガンダムビルドファイターズ』という作品は、
架空の物語の中に、架空の物語が存在している入れ子構造
になっていると言えるわけです。
同じような作品は他にもあるのでは?
「架空の物語の中に、別の架空の物語が登場する作品」は、『ガンダムビルドファイターズ』だけというわけでありません。
『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』にも、J.D.サリンジャーの『ライ麦畑で捕まえて』が登場していました。
それにもかかわらず、どうして『ガンダムビルドファイターズ』にだけ、特にこの構造のおもしろさを感じたのを考えてみたのですが、それはおそらく、
作品のど真ん中に架空の物語を据えているから
なんだろうと思います。
土台になっている、と言ってもいいのかもしれません。架空の物語の上に、さらに架空の物語を載せているようなイメージですね。
『ガンダムビルドファイターズ』という架空の物語は、「ガンダム」というもう一つの架空の物語の存在が前提となっている。
この「二層の架空性」とでも言うべきところが、おもしろさとなっているように感じました。
『プラモ狂四郎』との違いは「アニメであること」
『ガンダムビルドファイターズ』が、『プラモ狂四郎』の系譜を継ぐ作品であることは冒頭で紹介しました。
『プラモ狂四郎』もガンプラによるシミュレーションバトルが行われる物語ですから、『ガンダムビルドファイターズ』同様、「二層の架空性」は存在しています。
ですが、実際には『プラモ狂四郎』から、『ガンダムビルドファイターズ』と同じような印象は受けませんでした。
理由は、媒体の違いにあります。
『ガンダムビルドファイターズ』と「ガンダム」は、どちらもアニメです。
媒体が共通であるため、同質性がより強く感じられるのですね。
『プラモ狂四郎』は漫画作品ですから、アニメである「ガンダム」とはどうしても隔たりができてしまいます。
「二層の架空性」もぼやけてしまうため、『ガンダムビルドファイターズ』ほどこの構造の魅力を感じないのだろうと思います。
『ガンダムビルドファイターズ』感想2:すっきりとしたわかりやすい物語
冒頭でもご紹介した通り、
シンプルでわかりやすい
という点も『ガンダムビルドファイターズ』の特徴です。
セイとレイジの目標は、最初から一貫して「ガンプラ世界大会の優勝」でぶれませんし、毎回のエピソードも
- 単話完結が基本
- ガンプラバトルがクライマックス
と決まっているのでわかりやすいです。
また、
- レイジの出自
- プラフスキー粒子の存在
といった、物語を貫く謎の正体もシンプルで、じっくり考えなければ理解できない、というようなことはありません。
「ガンダム」の知識は必要?
『ガンダムビルドファイターズ』は、「ガンダム」が土台になっている作品です。
ですが、「ガンダム」の知識は必須ではありません。
そのため、「ガンダム」シリーズの作品をまったく見たことがなくても楽しむことができます。
「ガンダム」の知識があった方が、より楽しめることは確かです。
「ガンダム」に登場するおなじみのセリフや用語、設定などが随所にちりばめられていますし、「ガンダム」シリーズの主要登場人物を、モブとして描いてる場面もありますからね。
ただ、あくまで小ネタレベルです。
「ガンダム」を知らないからと言って、『ガンダムビルドファイターズ』がわからない、ということにはなりません。
「ガンダム」を見たことがなくても、安心して楽しむことができます。
『ガンダムビルドファイターズ』感想3:「ほぼ本物」のガンプラバトル
ガンプラバトルは、その名の通りガンプラ同士が対戦する競技です。
戦うのは、あくまでプラモデル。
ですが、『ガンダムビルドファイターズ』のバトルシーンは、実際の「ガンダム」とほとんど変わりがありません。
これはまあ、当たり前と言っていいかもしれません。
どちらもアニメですからね。
プラモデルもモビルスーツもアニメでは絵として表現されますから、それが動いて戦う姿は似通ったものになります。
そのため、バトルシーンはほぼ「ガンダム」として楽しめます。
ダメージを受けたときに違い
ただ、まったく違いがないか、というとそういうわけでもありません。
わかりやすいのは、ダメージを受けたときですね。
腕や頭を失ったときにむき出しになるのは、機械的な内部構造ではなく、プラモデル用のジョイントパーツです。
また、接着剤を利用した戦い方や、バトル中のパーツの着脱など、
戦っているのは、あくまでプラモデルである
ということを強く意識させる場面も登場します。
こういった部分は、『ガンダムビルドファイターズ』特有のリアルさであり、おもしろいところでもあると思います。
作品を超えた戦いが何度も
「バトルシーンがほぼガンダム」であることでうれしいことの一つは、
違う作品に登場する機体同士の戦いを、本物さながらに見せてくれる
という点です。
いわゆる、「夢の対決」ですね。
特に世界観がまったく違う作品同士の場合、片方に登場した機体が、もう片方に登場するということは通常あり得ません。
そうした対戦が見られるのも『ガンダムビルドファイターズ』ならでは、と言えるでしょう。
ただ、これがうれしいのは「ガンダム」ファンだけですね。
それに、機体も改造されていることが多いので、オリジナルそのままというわけにはなかなかいかなかったりはします。
『ガンダムビルドファイターズ』感想:まとめ
本記事では『ガンダムビルドファイターズ』の感想を書きました。
- ガンプラを題材にすることのおもしろさ
- すっきりとしたわかりやすい物語
- 「ほぼ本物」のガンプラバトル
本作のおもしろいところは、同じアニメ作品である「ガンダム」を物語の中心に据えているところだと思います。
アニメをベースに、アニメを作っているということですね。
ただ、すっきりとしたわかりやすい物語なので、「ガンダム」を見たことがまったくない方でも楽しむことはできると思います。
ガンプラバトルの場面はほぼ本物の「ガンダム」ですから、バトルシーンが気に入ったらぜひ他の「ガンダム」作品も見ていただけたら、と思います。
『ガンダムビルドファイターズ』は、dアニメストアなどで配信があります。
今回は、以上です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。