『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』感想・レビュー|哀しみとやりきれなさに心震える

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-
ボンズ 2007
監督:岡村天斎
脚本:岡村天斎・野村祐一・菅正太郎・大西信介・砂山蔵澄
キャラクター原案:岩原裕二
キャラクターデザイン・総作画監督:小森高博
音楽:菅野よう子
キャスト:木内秀信・福圓美里・沢木郁也・池田勝・水樹奈々

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』は、2007年4月から9月にかけてMBS・TBS系列で放送されたBONES制作のテレビアニメです。

シリーズとしては他に『外伝』がOVAで、第2期が『DARKER THAN BLACK -流星の双子-』のタイトルで2009年に放送されました。

「DARKER THAN BLACK」シリーズ
  1. DARKER THAN BLACK -黒の契約者-
  2. DARKER THAN BLACK -黒の契約者- 外伝
  3. DARKER THAN BLACK -流星の双子-

全26話で、第22話までは1エピソード前後編の2話構成になっています。どのエピソードも見ごたえはありますが、前編だけだと導入で終わってしまうこともあるので、2話ずつ見ていくのがいいかもしれません。

なお、第26話は本放送当時にはテレビ未放送でした。内容もサイドストーリーになっていますので、全26話と言いながら実際には「25話+1話」というのが正しいかもしれません。

本編も第25話までで終了しています。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』概要

契約者」と呼ばれる特殊能力者である主人公黒(ヘイ)が、「組織」から与えられた任務を達成するために、他の組織のエージェントや契約者たちと戦う姿を描いた物語です。

舞台は、10年前に「地獄門(ヘルズ・ゲート)」と呼ばれる未知の領域が出現した東京。ゲートのせいで一部地域が立ち入り禁止区域となってしまっており、現実とは大きく異なっています。

契約者は、ゲートの出現とほぼ同時期にその存在が確認されました。

普通の人間がある日突然変化してしまうのが契約者であり、ゲートと何らかの関係があると思われているのですが、その正体はよくわかっていません。

同じように普通の人間からの変化で、ゲートと関係があると思われているのが「ドール」です。

こちらは契約者と違って、意思や感情を完全に喪失してしまうのですが、なぜそんなことが起こるのかはやはりわかっていない。

「ゲート」も「契約者」も「ドール」もわからないことだらけで、そのわからないものを中心に物語は展開していきます。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の魅力1:物語に漂う「哀しさ」

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DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』から強く感じるのは、「えも言われぬ哀しさが漂う作品である」ということです。

1エピソード2話完結が基本と書きましたが、一つのエピソードを見終わるたびに、泣きたくなるような気分になるのですね。

そう感じる理由は、おそらく「喪失感」にあるのだと思います。

本作の登場人物は、その多くが過去に何かを失っています。主人公黒(ヘイ)もそうですし、銀(イン)や猫(マオ)、黄(ホァン)といった、同じ組織に所属する黒の仲間たちも同じ。

そしてそれは、各エピソードに登場するゲストキャラクターたちも変わりがありません。

みんな何かを失い、喪失を抱えて生きています。

そうした人たちの心が救われるような物語であれば、哀しさや寂しさを感じることもないでしょう。

でも、『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』はそうはなっていません。彼らに用意されてる結末は、ほとんどが幸福なものではないのです。

安易な癒しを拒絶する、とでも言えばいいでしょうか。

見終わった後に何とも言えないやりきれなさが残るのですが、一方で「それがそのまま人生そのものの哀しさ」のようにも思えてきます。

このときに感じる一種のカタルシスが、『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の一つの魅力になっています。

「本当の星空」を失った世界

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』から感じる哀しさの理由としてもう一つ挙げられるのが、舞台設定です。

「どこか不安で、どこか寂しさを感じさせる空気」と言ってもいいかもしれません。

個人個人の中にある「喪失」の他に、物語で生きる人たち全員に共通する喪失というのも本作には存在しています。

それが「本当の星空」です。

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の世界では、10年前のゲートの出現と同時に、「本当の星空」が失われています。

夜空に星は浮かんでいるのですが、それは我々が知っている星ではありません。星は、宇宙から届く恒星の光ではなく、契約者の存在を示す光になってしまっているのです。

本当の星空は、偽りの星空に遮られて見えなくなってしまっている。

その「喪失」を、『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の世界に生きる全員が共有しています。

そしてそれが、本作の「どこか不安で、どこか寂しい」空気を作り出す一因にもなっているようにも感じられるのですね。

この点は、実は作品の中でも言及されています。

物語も終盤に差し掛かった第23話に、「昔の星空の思い出を集める」という話が登場します。

依頼を受けた私立探偵の久良沢凱が、助手の茅沼キコとともに人々に話を聞いて回るのですが、思い出を語りたがる人は意外なほど多い。

それを受けて久良沢が口にする所感が、作品の空気をそのまま表しています。

「ま、やっぱりゲートが出現してから、どことなく不安なんでしょう」

「みんな平気な顔してるけど、やっぱり何となく今が不安なんじゃないの。だから思い出に浸りたくなる」

ゲートが出現し、本当の星空が失われたことが、漠然とした不安となって人々の心に暗い影を落としている。だから、本当の星空が見えていた「幸福な過去」を思い出したくなる、というわけですね。

「幸せだったあの頃を懐かしく思う」というのも、人生そのものの哀しさの一つかもしれません。

なお、この久良沢と助手のキコは非常に印象的なサブキャラクターで、何度か物語に登場します。

二人とも、契約者やドールについてはその存在すら知らない一般人ではあるのですが、重めの話が多い中でコミカルな役回りを演じてくれる貴重なキャラクターです。

この二人が登場すると、ほっとします。

ただ、コミカルなばかりでないのがいいところで、特に久良沢は時折とても良心的だったり、物事の核心を突くようなことを言ったりもします。

メインのストーリーに大きく絡んでくることはないのですが、物語に欠かせない人物と言っていいと思います。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の魅力2:ただの超能力者ではない「契約者」

契約者を「ただ超能力が使えるだけの存在にしていない」というのも、『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』という作品のおもしろいところです。

契約者は「普通の人間にはない、特殊な能力が使える」というだけでなく、「人間らしい感情が希薄化した存在」でもあるのですね。

この設定の興味深いところは、突き詰めていくと契約者こそが、現代の社会に最も適合した存在に思えてくるところです。

「普通の人間にはない超常の力を操り、かつ人間らしい感情が薄く、冷酷な行為も平気で実行できる存在」

契約者に対して、その存在を知る契約者以外の人間が抱いているイメージはこのようなものです。そのため、契約者は「人間でない化け物」と呼ばれることもあります。

しかし一方で「人間らしい感情が薄い」ということは、「感情に流されず、合理的な判断ができる」ということでもあるんですよね。

そしてここだけ切り取ってみると、契約者は化け物どころか非常に優秀な人間であると言うことができてしまいます。

というのも、現代の社会で人間が求められる能力がまさに「感情に流されず、合理的な判断ができること」だからです。

感情や常識に捕らわれず、利益だけを求める人間が成功するようにできているのが、人間社会ですからね。これは物語の世界だけでなく、現実でも変わりはありません。

本作で描かれている契約者の大半は、確かに人間らしい感情が薄く、冷酷なことも顔色一つ変えることなく実行できる存在です。

普通の人間からすると、化け物と思えても仕方がないところがあるのかもしれません。

一方で、その化け物的な存在である契約者が、実は人間社会に最も適合した存在なのだとしたら、人間社会に適合した究極の姿とは、人間らしさを失った化け物ということにもなってしまいそうです。

そう考えると、この契約者という存在は、人間社会への痛烈な皮肉にも思えてきます。

なお、この「契約者こそが、人間社会に最も適した存在かもしれない」という点は、主人公黒とある契約者との対話という形で、作品の中でも取り上げられています。

先ほどの、私立探偵久良沢による作品の空気を言い表す言葉もそうですが、そうした自己解説的な側面があるのも『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』という作品に見られる特徴の一つです。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の魅力3:食事の場面が多め

DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』で印象的だったのが、食事の場面がよく出てくることです。

特に多いのは、主人公の黒と、黒を追う警視庁公安部の桐原未咲が何かを食べているところ。

黒は大食漢で食べる量が非常に多く、未咲も唐揚げや焼肉といった油っこいものをよく食べています。

黒は外食ばかりでなく、自分で料理を作ることもあるのですが、こちらもいい。

しかしやはり食事している場面で、大量の料理をテンポよく口に入れていく姿には小気味良さがあって、見ているこちらも何かを食べたくなってきます。

繰り返し登場するので、「食べる」という行為に何らかの意味を見出したくなる気持ちも生じはします。

でもここはあれこれ考えるより、食べる姿をそのまま楽しむ場面なのかなという気がしました。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』の魅力4:バトルシーン

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』には、様々な能力を持った契約者が登場します。

この契約者たちのバトルシーンは、やはり本作の魅力の一つです。

ただ少しおもしろいのは、黒が決して能力だけに頼った戦い方をしないという点ですね。

黒が戦いの際に使う契約者としての能力は電撃なのですが、そればかりを使うわけではありません。というより、むしろその能力を使うことの方が少ない。

契約者になる前から凄腕のエージェントだった黒は、ワイヤーやナイフを使った戦闘術に長けています。そのため、契約者としての能力がなくても十分強い。

バトルシーンで目立つのは電撃よりもむしろワイヤーで、あちこちに引っ掛けて体を引っ張ることで、立体的な動きを可能としています。

これはあまり、他の作品で見られないところかもしれません。

『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』まとめ

今回ご紹介した『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』は、個人的に好きな作品の一つです。

まだ見ていないという方は、ぜひチェックしてみてください。

dアニメストアやU-NEXTでお試し期間を利用すれば、無料で全話見ることもできると思います。

タイトル『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』
放送2007年4月5日 -9月27日
放送局MBS・TBS系列
話数全25話+テレビ初回未放送1話
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この記事を書いた人

アニメとサッカーを見るのが好き。
累計視聴数は400本を超えていて、今も増え続けています。

作品を見て、感じたこと、考えたことを書いています。