ぴりおだです。
2020年のJリーグは、新型コロナウイルス感染症の影響で「昇格あり・降格なし」の特別ルールで開催されました。
その影響は翌年にも及び、2021年のJ1は例年より2チーム多い、20チームでの開催となっています。
J1への昇格とJ3からの昇格、両方があるJ2の場合、チーム数こそ例年と同じ22チームでの開催が可能ですが、
- J3降格枠が2 → 4と倍増
- J1参入プレーオフが開催されず
と、昇格・降格に関わる部分でこちらもやはり小さくはない影響を受けています。
2021年のJ2は厳しい? 厳しくない?
「昇格枠減、降格枠増」ですから、ここだけみると厳しいように見えます。
しかし一方で、
- J1からの降格チームがない
- J3に降格するはずだったチームが残留している
という点に注目すると、
「昇格あり・降格なし」の翌年のJ2は、例年よりレベルが下がっている
と考えることもできます。
この場合、レベルが下がるわけですから、2021年のJ2は必ずしも厳しくはないということもできそうです。
一体、どちらが正しいのでしょうか?
本記事ではこの点を明らかにするために、一般的な話として、
「昇格あり・降格なし」は、翌年のJ2のレベルを下げるか
という点と、具体的な例として、
- 2021年のJ1昇格は厳しくなるか
- 2021年のJ2残留は厳しくなるか
という点について、考えてみたいと思います。
目次
「昇格あり・降格なし」は翌年のJ2のレベルを下げるか
「J1からの降格チームの代わりに、本来ならJ3に降格するチームが残留している」わけですから、シンプルに考えるとレベルは下がるように思えます。

でも、本当にそうでしょうか?
- J1から降格したチームの成績が翌年振るわない
- 運よくJ2に残留したチームが翌年躍進する
というケースだって、ありえますよね?
事実、J1の場合には、降格なしによって残留を免れたチームが、翌年上位に食い込んだ、というケースが存在します。
こちらの記事で紹介しています。
J1から降格したチームの実績
「昇格あり・降格なし」が翌年のJ2のレベルを下げるかどうかを知るために、まずはJ1から降格したチームの実績を調べてみます。
J2が現在と同じ22チームになったのは、2012年。
そこから2020年までに、J1から降格したチームの成績は次のようになっていました。
J1から降格したチームの翌年の成績
年度 | J1から降格したチーム | 順位 |
2012 | 甲府 | 1位 |
福岡 | 18位 | |
山形 | 10位 | |
2013 | 神戸 | 2位 |
G大阪 | 1位 | |
札幌 | 8位 | |
2014 | 湘南 | 1位 |
磐田 | 4位 | |
大分 | 7位 | |
2015 | 大宮 | 1位 |
C大阪 | 4位 | |
徳島 | 3位 | |
2016 | 松本 | 3位 |
清水 | 2位 | |
山形 | 14位 | |
2017 | 名古屋 | 3位 |
湘南 | 1位 | |
福岡 | 4位 | |
2018 | 甲府 | 9位 |
新潟 | 16位 | |
大宮 | 5位 | |
2019 | 柏 | 1位 |
長崎 | 12位 | |
2020 | 松本 | 13位 |
磐田 | 6位 |
2012年から2020年までの9年間に、J1から降格したチームは、のべ25チーム。
平均順位は5.96で、9年間のうち6回優勝しています。
2桁順位に沈んだチームも6つありますが、全体として、
J1から降格したチームの実績は、やはり高い
と言っていいでしょう。
J3降格をまぬがれたチームの実績
J1からの降格と違って、「J3降格をまぬがれる」というのは、特殊ケースです。
通常は、存在しません。
そのため、「実績」といってもほぼないと言っていいのですが、ここでは疑似的にJ2からの自動降格枠が1だった時代(2012年~2017年)の実績を使って調べてみます。
現在は、J2の下位2チーム(21位、22位)が自動降格ですが、2017年までは
- 自動降格は22位だけ
- 21位は残留、もしくは入れ替え戦出場
のどちらかでした(時期によって違う)。
今回利用するのは、J2残留に成功した21位のチームです。
このチームは、現在のルールに照らし合わせると「J3降格をまぬがれたチーム」に相当します。
J2 21位の翌年のJ2での成績は、次の通り。
J2 21位のチームの翌年の成績
年度 | 前年度J2 21位のチーム | 順位 |
2012 | 岐阜 | 21位 |
2013 | 岐阜 | 17位 |
2014 | 讃岐 | 16位 |
2016 | 金沢 | 17位 |
2017 | 熊本 | 21位 |
平均順位は、18.4。
すべてのクラブが2桁順位で、2016年讃岐の16位が最高でした。
降格をまぬがれた翌年に躍進、というチームは、ここで調べた限りでは存在しないようです。
J1から降格したチームがないことで、J2のレベルは下がる
Jリーグが、「昇格あり・降格なし」で開催された年の、翌年のJ2リーグは、
- J1から降格したチーム
- J3降格をまぬがれたチーム
が入れ替わっていることになります。
ここまで見てきた通り、「J1から降格したチーム」の方がレベルは高いことがわかりましたから、当初の予想通り、
「昇格あり・降格なし」の翌年のJ2リーグは、全体のレベルが下がる
という考えは、どうやら正しいと言うことができそうです。
「昇格あり・降格なし」の翌年、J1昇格は厳しくなるか

自動昇格の難易度は下がる
これについては、全体のレベルが下がるから、というよりも、J1からの降格チームがないことが大きいです。
J2が22チームになった2012年から2020年までの9年間のうち、J1からの降格チームが自動昇格枠に入れなかった年は、わずかに2回。
残り7回は、J1からの降格チームが1位もしくは2位になり、1年でのJ1復帰を成し遂げています。
「昇格あり・降格なし」の翌年は、この枠が無条件で空くわけですから、自動昇格を狙う場合の難易度は下がると考えてよいでしょう。
ただ、これはあくまで自動昇格のケースであり、これだけでJ1昇格の難易度全体が下がる、と言い切れないところはあります。
2021年もそうですが、「昇格あり・降格なし」の翌年は、「プレーオフ枠」がなくなる可能性があるからです。
プレーオフ枠がなくなるのは厳しい
「昇格あり・降格なし」で開催された翌年のJリーグで、「プレーオフ枠」が確実になくなるかどうかはわかりません。
ただ、2021年については、なくなりました。
このため、2021年にJ1昇格を目指すなら、プレーオフ圏内の6位以内ではなく、自動降格圏である2位以内に入る必要があります。
2位と6位で難易度が違うのは、明らかですよね。
一応2012年から2020年の勝ち点の平均を比較すると、予想通りの段違い。
- 2位:80.7
- 6位:66.4
ただ、現在開催されているJ1参入プレーオフからの昇格は元々可能性が低く、2019年までの間にJ1昇格に成功したチームは存在していません(といっても、2018年、19年の2回しか開催されていませんが)。
「J1昇格には、元々J2で2位以上になることが必要」と考えると、「プレーオフなし」がJ1昇格の難易度上昇に与える影響は、それほど大きくないとも言えそうです。
「昇格あり・降格なし」の翌年、J2残留は厳しくなるか

降格枠増の影響は限定的?
「昇格あり・降格なし」の翌年に想定されるJ2残留への影響は、降格枠の増加です。
2021年のJ2も、降格枠は2から4に倍増しました。
J2全体のチーム数は2021年も22で変わりがありませんから、降格枠が倍増することで、残留が厳しくなることが予想されます。
ただ、残留ラインの順位(例年なら20位、2021年は18位)に必要な勝ち点を比較してみると、降格枠の増加が与える影響はそれほど大きくないことがわかります。
- 18位:45.7
- 20位:41.7
18位と20位の勝ち点差は4。
1勝1分の上積みで、20位から18位に浮上することが可能です。
既に何度かご紹介している通り、「昇格あり・降格なし」の翌年は、
- J1から降格したチーム
- J3降格をまぬがれたチーム
の入れ替りが発生し、下位チームが増えていますから、勝ち点4の上積みは例年よりも難しくないことが予想されます。
そう考えると、降格枠増の影響は、実は限定的、ということもできそうです。
まとめ:「昇格あり・降格なし」の翌年のJ2

本記事ではJ2リーグの、
- 「昇格あり・降格なし」の翌年、全体のレベルは下がるか
- 2021年のJ1昇格・J2残留の難易度
について、考えてみました。
「昇格あり・降格なし」の翌年、J2リーグのレベルは低下が想定されます。
2021年のJ1昇格については、自動昇格の難易度は下がると考えてよいでしょう。
プレーオフ枠がなくなりますが、過去のJ1参入プレーオフの実績を考えると、昇格難易度に与える影響は限定的です。
降格枠が倍増することによるJ2残留の難易度も、それほど大きく上がってはいない、ということができそうです。
残留ラインが20位から18位に上がりますが、両者の勝ち点差は4(1勝1分相当)です。
J1からの降格チームの代わりに、J3への降格をまぬがれたチームが残っているという状況を考えると、こちらの影響も限定的と言えるからです。